アイビーシー(IBC)は、ネットワーク監視アプライアンスを自社開発する数少ない国産メーカー。知名度が低いベンチャーながら、住商情報システムや富士通ビジネスシステムなどの大手SIerが技術力を認め、同社製品を扱うことに。創業してもうすぐ5年、株式公開がみえてきた。
トップを務めるのは、創業者の加藤裕之。東証1部上場企業の技術職から始まった社会人生活だが、将来の可能性が見いだせなくなって、当時ベンチャー企業だったアライドテレシスに転身した。わずか1年でトップの営業実績をあげ、株式公開も経験。役職と年収は飛躍的にあがり、絶対的な自信も手に入れた。これが起業を後押しする。
しかし、その自信は創業1年目で崩れる。創業メンバーの突然の退職、資金繰りの苦労…。サラリーマン時代に稼いだ資産の大半をつぎ込んだ。「八方ふさがりで、サラリーマン時代の自信は錯覚だったと気づいた」。経営者とサラリーマンの違いを思い知らされたという。
紆余曲折を経て今は着実に業績が伸びてきた。持ち前の営業力が社内に浸透し、先進的な技術力を伝えられるようになってきた。ただ、ベンチャー経営者が往々にして放つ野心臭さはなく、企業規模の追求は重視しない。この業界では異例だが、1次代理店に販売額のコミットメント(必達目標)を設けていない。「うちの製品を取り扱いたいと思ってくれるだけで嬉しいから」というのが理由だ。
「会社を起こすなんて、世間知らずのオレみたいなバカじゃなきゃできないよ」。だが、そう語る表情に屈託はない。社長業を楽しみ始めたようだ。(文中敬称略)
プロフィール
加藤 裕之
(かとう ひろゆき)■1967年生まれ、茨城県出身。■大学卒業後、東証1部上場の素材メーカーに入社。■92年、アライドテレシスに移り97年には営業部長に。01年に退職。その後、ベンチャー企業取締役を経て、02年10月にアイビーシー(IBC)を設立し代表取締役に就任。