「代理戦争はもう嫌だ」と思い、SaaS型ERPを業界に先駆けてつくった。ハードウェアベンダーとの関係が薄いユーザー系SIerのサービス基盤を使い、OSやデータベースはオープンソースソフトにした。
特定のハードやOSに依存しないSaaSならば大手プラットフォームベンダーが繰り広げる規格争いに巻き込まれずに済むからだ。
目まぐるしく変わるプラットフォームにユーザー企業の業務ソフトが追いつかず、そのたびにソフトをつくり直してきた。「われわれ業務ソフトベンダーは、結局のところプラットフォームベンダーの代理戦争をしていた」と振り返る。
過去に苦い経験がある。IBMのOS「OS/2」とマイクロソフトの「Windows」が激しく争っていた時、自身が経営していた業務ソフトベンダーはOS/2陣営についた。1000社を超えるユーザーを獲得するまでビジネスを広げた。しかし、ある日、IBMがOS/2事業からの事実上の撤退を決定。陣営は一気に形勢不利に陥り、ビジネスは行き詰まった。Windowsに乗り換えるため別の会社を立ち上げたがうまくゆかず、SaaS型アプリを開発するガイアに参画した。
「これまで支持してくれたユーザーを引き続き支援したい」という思いから、肩書きは営業部長でも、技術部長でもない“カスタマーサポート部マネージャ”だ。
業務ソフトはこれまでハードやOSが変わるたびに綿々とつくり直してきた。「ソフトはノウハウの積み重ね。ゼロからつくり直すと到達できる地点はいつも同じ。進歩がない」。“代理戦争”に巻き込まれない“永世中立”の実現こそが、「ユーザーに恩返しできる道」だと考える。新たな挑戦が始まった。
プロフィール
田畑 聡
(たばた さとし)■1954年、鹿児島県生まれ。77年、電気通信大学電子計算機学科卒業。■研究生として1年間大学に残ったのち、東芝ビジネスコンピュータ(現・東芝情報機器)入社。オフコンの業務アプリケーションのパッケージ化を手がける。■88年、東京税理士会の有志メンバーとともに財務会計を中心とする業務ソフト開発会社、日本システム・ポイントを立ち上げる。■02年、SaaS型オンデマンドERP(統合基幹業務システム)サービスを提供するガイアに参画。今年5月、SaaS型ERP「jGAIA」を業務ソフト業界に先駆けて投入。SaaS大手のセールスフォース・ドットコムとの連携も可能。