大学卒業後に就職したのは大手メーカー。年功序列が染みついた環境で、長く勤めていれば安定した人生が送れる。半面、「自分のやりたいことができない」。10か月で辞めた。以降は、チャレンジの連続だった。
その後に入ったのはロータスやマイクロソフト。「生まれて初めてITを学び、また海外の社風を肌で感じ、“魅力的”の一言に尽きた」という。しかし、外資メーカーという点で、開発といえば日本向けのローカライズが中心。「(ローカライズも)重要な開発だけど、やっぱりコードが書きたい」。技術者ならではのストレスを抱えているなか、ロータス時代の上司に誘われてP2Pが主力事業のアリエル・ネットワークの設立に参画した。上司とは、栗村信一郎・元アリエル社長だ。
アリエルではコードが書ける喜びを実感しながら、P2P技術者として国内屈指のスペシャリストに。そのうち、無料のIP電話「スカイプ」が日本に登場。P2P技術の活用という点でアリエルと同業だ。当時のスカイプ日本オフィス・ジェネラルマネージャーに何度となくアドバイスを求められるようになる。この縁でスカイプに引っ張られ、元ジェネラルマネージャーが米本社に戻るのをきっかけに職を引き継いだ。
人生の岐路で、あえて「リスク」を選んでいるようにもみえる。「先が分からないほうが面白い」と笑う。「『リスクに挑むからこそ成長する』というのが信念」だとも。自らの信念を貫き、今ではスカイプの知名度を日本に浸透させつつある。
プロフィール
岩田 真一
(いわた しんいち)■1972年10月10日生まれ、東京都八王子市出身。■96年3月、慶應義塾大学理工学部物理学科卒業。■ロータス(現日本IBM)でAS400版ドミノなどの開発、マイクロソフトのMSN事業部でネットワークPMを経て、01年にアリエル・ネットワークの設立に参加。P2Pアプリケーションの企画、設計、開発、マネージメントなどの業務に携わる。また、P2P技術についての啓蒙活動やコンサルティングも行う。■05年8月にスカイプ日本オフィスのジェネラルマネージャーに就任。日本のマーケットや戦略的パートナーシップの開拓に従事する。