昨年2月、マイクロソフトオフィスとの互換性があり、価格は10分の1という破格のオフィスソフト「KingsoftOffice 2007」の発売に続き、7月には「業界初」の無期限・無料セキュリティソフト「Kingsoft Internet Security free」の提供を開始し、注目を集めている。
メイン画面やパターンファイル更新時に広告が表示される広告収益モデルで、ユーザーは広告を閲覧する代わりに無期限、無料でソフトを使うことができる。ブログユーザーなどの間で話題となり、「昨年は40万ダウンロードを超え、今年半ばには100万ダウンロードの大台が見えてきている」。100万人のユーザー数は、「広告媒体」としての価値が評価される水準でもある。
社内にはモバイル放送の音楽が流れている。「静まり返っているのはさびしい。社員の平均年齢も若いベンチャー企業だし、やる気を出すような環境作りをしている」そうだ。自らもアイデアを出すが、現場の意見も大切にする。販促展開などでアイデアが上がれば、会議にはかけず、まず任せてみる。「とにかく試してみたほうがノウハウがたまるだろう」。もし結果が悪かったとしても、それで評価が決まるのではない。「次は方法を変えてやってみろ」と背中を押してやる。プロモーションでは、営業のアイデアでAM/FMラジオ10局で3日間、CMを流したところ、聞いた視聴者が反応し、ネットでの同社ソフトの検索数の伸びにつながった。
今年は「セキュリティソフトを『広告媒体』として定着させる」と意気込む。
「日々、何万もの人がセキュリティソフトの更新期限を迎えている。これを機に、ぜひ当社のソフトを試してもらいたい」
プロフィール
広沢 一郎
(ひろさわ いちろう)■1986年3月、慶応義塾大学卒業。同年4月、ブラザー工業入社。■90年6月、新事業推進室に異動。パソコンソフト自動販売機「ソフトベンダーTAKERU」事業でコンシューマソフトウェアメーカーとのアライアンスを担当する。■97年2月、ブラザー工業を退社し、同年3月、伊藤忠商事に入社。コンテンツ事業部でPCソフトウェアの企画・制作に従事する。■98年5月、伊藤忠商事を退社し、マグノリア設立。■05年3月、中国の金山軟件および香港VCとのジョイントベンチャー、キングソフトの設立とともに、代表取締役に就任。■趣味はダイビング、ウインドサーフィン。