昨年10月、月折郷子はミドルソフト設計部長に昇進した。協力会社を含めて総勢200人のメンバーを束ねるトップだ。日立ソフトウェアエンジニアリング(日立ソフト)では3人目の女性部長となる。
20年前の就職活動中のことを思い出す。男子学生には山のように求人雑誌が送られてくるのに、女子にはほぼ皆無。ネットや携帯電話などの便利ツールもない。「男子から雑誌を借りて応募しても、なしのつぶて」。女子学生の就職氷河期だ。こうしたなかでも、IT産業は女子の採用に積極的で、先輩を頼って扉を叩いたのが日立ソフトだった。
時代は変わる。女性に門戸を開いていたはずの職場が、いつの間にか3Kと揶揄され、別の意味で敷居が高くなった。自らが苦労しただけに、2006年、働きやすい職場作りを目指した活動・女性ワーキンググループの中心メンバーの1人になる。仕事と生活の調和を目指した改革が評価を得て、社会経済生産性本部の「ワーク・ライフ・バランス大賞」の優秀賞を昨年11月、受賞する。
仕事のやり方も変えた。従来は与えられた人員や時間、予算のなかで、利益を出して終わらせれば「プロジェクトは成功」。でも、これからは違う。「つくったソフトを売る。いや、売れるソフトをつくる」ことが求められる。必要であればオリジナルのソフトを独自に開発するケースも出てくる。受け身の体質から、需要を捉えて積極的に提案するスタイルへと改革を進める。
「所詮は40年しか歴史のない発展途上の産業。仕事のやり方、女性の働き方、目指すべき方向性…、変えようと思えば、いくらでも変えられる」。1人ひとりの意識改革が、大きなうねりにつながる。(文中敬称略)
プロフィール
月折 郷子
(つきおり さとこ)■1965年、秋田県生まれ。87年、東北大学教育学部卒業。■同年、日立ソフトウェアエンジニアリング入社。■07年10月、ミドルソフト第4設計部長。