バブルの末期。ソフトウェア業界はまさにこれから。人手が足りず、プログラムさえ覚えれば食べていけるような時代だった。「自分に向いているのではないか」。当時はまだ学生だった大家正巳は、漠然とながら「コンピュータの世界に入りたい」と考えていた。
ある時、求人雑誌にコンピュータメーカーの情報が載っていたのを目にして、アルバイトとしてIT業界に足を踏み入れた。当初はショールーム内の機器を移動する力仕事を任されていたが、事務や雑務を通じて、コンピュータの知識を身につけていった。
その後、システムの下請けの会社に転職し、大規模プロジェクトの下流工程を手がけた。そこで、「プロジェクトは上流の設計が上手くなければ、プログラマにそのしわ寄せが回ってくる」ことを身をもって知った。
そのころから「自分の作ったシステムを顧客に使ってもらいたい」と思うようになった。「時流に流されない、本当にビジネスに役に立つシステムを提供したい」。『労働集約型』から脱し、簡単にソフト開発のできる世界を目指し、起業前からベースとなる構想を膨らませてきた。独自の開発ツールを徐々にレベルアップさせて、昨年、高速BIツール「BIBO」を開発。他社のBIツールは開発の自由度が高すぎ、逆に時間がかかってしまう。「BIBO」では搭載機能を厳選し、開発スピードを他社の10倍に短縮することを可能にした。
起業してすぐにトラブルに巻き込まれ、時間をロスしてしまったこともある。「今年は本当の意味での創業の年」。最近、BIBOの機能をグレードアップさせた。「構想」の実現に向け、一歩ずつ、着実に歩を進める。(文中敬称略)
プロフィール
大家 正巳
(おおや まさみ)■1988年電気通信大学電気通信学部中退。■1990年、日本デジタルイクイップメントに臨時社員として入社。■1993年シー・エム・シーに入社。■2001年、システムコンサルタントとして独立。■2002年、ヴィバークを設立。■08年4月、高速BIツール「BIBO」をバージョンアップ