「Winner takes all(勝者がすべてを得る)」という言葉がある。米国では3位としてそれなりのシェアを持っていても、日本市場で競合相手と戦った場合、体力が足りずに業界の1番に追随できないほどシェアを引き離されてしまう。
米国資本のウォッチガードが戦うUTM(統合脅威管理)アプライアンスの日本市場でも、米国以上にシェアを獲得しているベンダーが存在する。本国と同じ戦法では勝ち目はない。「何もやらないより、他社と一線を画すようなジャンプ(新しいことへの挑戦)は、リスクをとってでも必要だった」。
今年2月、販社の協力を得て日本独自のセキュリティ管理サービス「SECURE FORCE」を提供開始した。顧客企業のネットワークトラフィック、ウイルス、スパムなどのログを、SECURE FORCEサーバーで収集するサービスだ。ITに精通していない顧客企業の担当者でも、簡単にブラウザを通してリアルタイムでグラフィカルな分析レポートを参照できる。不況のためにIT投資の抑制が浸透している。導入に及び腰な企業に対しても「月額制なので、試してみませんか」というように、障壁を下げることができる。
外資系企業では通常、現地法人が独自に何かを開始することを、本社は認めない場合が多い。だが独自サービスは「本社の戦略から外れるのではなく、あくまで『戦略を実行するための戦術』」と位置づけている。本当に独自展開をしていいのか、本社とは確認作業という名目で「さまざまかつ前向きなファイトもあった」と、その経緯をほのめかす。
サービスは立ち上がったばかり。だが「認めさせるのに労力をかけた分、SECURE FORCEで確実に業績をあげて、『日本でやらせてよかった』と納得させたい」と意気込んでいる。
プロフィール
本富 顕弘
(ほんぷ あきひろ) 1963年10月5日生まれ。1986年日商岩井(現・双日)に入社し、情報通信事業本部に籍をおく。その後、米国へMBA留学、ボストンに駐在。94年、シャイアン・ソフトウエア・ジャパン(現・日本CA)事業企画部長、98年にはDSET Inc.日本担当ディレクター。00年、トラドス・ジャパン社長を経て、01年、日本ネッテグリティ(現・日本CA)社長に就任。06年、圧縮ソフトを手がけるピーケーウェア・ジャパン社長。08年5月22日、ウォッチガード・テクノロジー・ジャパン代表取締役社長に就任した。