「ライブドア事件」後に社長として会社立て直しに尽力した平松庚三。ハーレーダビッドソンを乗り回す異色の経営者だ。その平松が弥生の社長を務めていた時代に須釜雷太を面接した。本人曰く「バイクに乗っている奴は信用できるというので、採用された」──というのは、でき過ぎた話かもしれない。本当のところは、かつて会員制病院でダイレクトマーケティングを担当した実績が買われたようだ。
入社した頃、弥生はまさに“いけいけどんどん”で業績を伸ばしていた。当時もいまも、業務ソフトウェアベンダーが力を入れているのは「保守契約」の獲得。須釜は、弥生ソフトを購入した企業に対して無料媒体などで情報発信し、契約を促す役割を担った。その取り組みが当たり、全社売上高の6割を占めるまでに契約数を伸ばすことができたのだ。
「社内的に通りやすい企画は出てくる。それで済むなら、苦労はいらない。だが、ユーザーはそんなものを求めてはいない」。持ち前のバイタリティーで、社内風土を「会社都合」でなく、「顧客視点」に変えていった。
現在は広告・宣伝の責任者。最近、大きな仕事となったのは、3月の税務申告期限に向けた「申告ソフト」のパッケージ決めだ。
家電量販店市場で競合のソリマチがテニスプレイヤーの松岡修造を起用し、じりじりとシェアを伸ばしていた。対抗策として「イメージキャラクターを使おう」と決断した。社内公募を経て、タレントの菊川怜に白羽の矢を立て、「シェアが不自然なくらいの急カーブで上昇した」という好結果を引き出した。
「明日死んでも後悔しないように、いまを生きる」。須釜が日頃から大事にする言葉だ。休日はスポーツジムで身体を鍛え、英トライアンフ製のバイクにまたがるアクティブ派。仕事でも「アイデアをどんどん出している」そうだ。公私ともに変わらぬ積極行動のスタイルを貫く人物である。(文中敬称略)
プロフィール
須釜 雷太
(すがま らいた) 1975年10月、埼玉県狭山市生まれ、33歳。2000年5月、米ペンシルベニア州のテンプル大学で心理学を専攻し卒業。その後、予備校で英語や英会話の講師を務めたあと、会員制病院で会員を募るためのダイレクトマーケティングを担当。06年1月、弥生に入社。ダイレクトマーケティングに携わり、現職。