「これから、豊洲(=NTTデータ本社)で面接しなきゃならないんですよ」。吉崎正英はNTTデータ社内認定試験を担当する会計ERPのスペシャリストだ。入社から一貫して企業業務システムの構築を手がけ、近年はSAPを得意領域としてきた。
SAPのERPは今でもよく売れているが、統合された企業向け基幹業務システムを自社でもつことはNTTデータにとっての悲願。10年ほど前、吉崎のよく知る部門で統合ERPを開発するプロジェクトが立ち上がった。グループ会社がそれぞれもつ業務システムをERPとして統合させるというもの。当時は傍から見ていただけだったが、結果は大幅な予算オーバーで頓挫。その時、辛酸をなめたメンバーの一人がアプリケーション基盤の開発で株式上場までこぎ着けた現NTTデータイントラマート社長の中山義人だった。
今年6月、吉崎は戦略子会社NTTデータビズインテグラルの経営を任される。社長はイントラマートの中山が兼務。「中山が方針を決め、私が執行する」役割だ。当時の統合ERP開発に従事したメンバーも多く集まった。イントラマートを基盤として、NTTデータグループ内外の業務アプリを統合。自社ERPを立ち上げることがビズインテグラルのミッションである。アプリ基盤に並々ならぬ情熱を注ぐ中山とERPのスペシャリストの吉崎がタッグを組み、「世界に通用するERPをつくる」。
今からSAPと同じことをしても勝てない。だが、強みのアプリ基盤をできる限りオープンにし、クラウド上でも稼働させ、グループ内外のSIerやISVが担げる商材に仕立てれば勝機はある。すでに大型の引き合いがきており、この秋以降の吉崎のスケジュールはほぼ満杯。プライベートライフでは昨年、結婚した。昼夜の関係なく仕事に励んできた吉崎だが、時間の使い方も自ずと変わってくる。公私ともに、これからが本当の勝負どころだ。(文中敬称略)
プロフィール
吉崎 正英
(よしざき まさひで) 1967年、兵庫県西宮市生まれ。90年、京都大学法学部卒業。同年、NTTデータ通信(現NTTデータ)入社。産業システム事業部配属。07年、製造・流通ビジネス事業本部ソリューションサービスビジネスユニット第三統括部長。09年、NTTデータビズインテグラル代表取締役常務に就任。