設計書通りに動作しているか、不具合はないか――。メーカーにとって、製品を市場に送り出す最終工程であるテスト(評価・検証)業務。日本ナレッジは、このテスト業務をメーカーから請け負いチェックする専門業者で、家電からソフトまで、幅広く手がける。入社4年目の石川俊一は「検証エンジニア」と呼ばれるこの道のプロだ。 家電好きが高じ、大学で機械工学を学んだ石川は、新卒で入社した印刷会社の営業から一転、日本ナレッジを新天地に選ぶ。入社直後はカーナビのテストを担当し、その後はマイクロソフトが開発したアプリケーションソフトの評価・検証を任された。クライアント先に常駐して、一人黙々とテスト、テストの毎日を過ごす。
製品の企画・設計や、それを世に広めるマーケティングに比べて、テスト業務が脚光を浴びることはまずない。それでも、ユーザーがプロダクトを手にする直前の、テストという最終関門がどれほど重要で、やりがいのある仕事かを、石川は知っている。外から見れば、花形の仕事ではないかもしれないが、経験を積めば積むほど、検証エンジニアの仕事にのめり込んでいった。
日本ナレッジの藤井洋一社長は“期待の星”とその力を評価し、昨年末から新たな仕事にチャレンジさせた。石川のような検証エンジニアを育てるための教育事業だ。講師として検証エンジニア育成のセミナーを展開するほか、評価・検証ノウハウを説いた出版物の執筆も担当。業界団体の活動にも精力的に取り組み、IT検証産業協会(IVIA)や情報処理推進機構(IPA)の関連事業にも携わる。
「正直に言うと、もう少し現場に出て学びたい。ただ、講師という活動を通じてテストビジネスが広まり、検証エンジニアの地位を向上させることができれば、とも思っている。検証ビジネスは必ず大きくなる。いずれにせよ、この仕事は生涯続けるつもり」。
検証エンジニアという黒子役を表舞台に引っ張り上げようと、忙しい日々を楽しんでいる。(文中敬称略)
プロフィール
石川 俊一
(いしかわ しゅんいち)1979年、茨城県生まれ。静岡理工科大学理工学部機械工学科卒業後、印刷会社の営業職を経て、06年に日本ナレッジに入社。組み込みおよびエンタープライズ系ソフトのテスト業務に従事した後、現在はソフトのテスト技術者向け教育事業を担当する。業界団体の活動にも積極的で、社団法人のIT検証産業協会(IVIA)の「教育・研修部会」に属し、IVIAが実施する「IT検証技術者認定試験(IVEC)」の運営に携わる。