2009年12月、12年間務めた日本オラクルを辞め、マイクロソフトに籍を移した。オラクル社員のなかでも古株で、高いプレゼンテーション能力をもつ。社外活動も積極的だっただけに、データベース業界が長い人であれば、西脇資哲の名前を知らない人はいないはず。それだけに競合への移籍は、衝撃を与えた。
きっかけは意外にも、新入社員からの質問だった。「『入社して12年、何をやってこられたんですか?』には即答したけど、『これからの12年、何をするんですか?』という質問に答えられなかった」。
答えをもっていなかった自分にショックを受けて、「この会社でまた過去と同じことを12年間繰り返すという選択肢がないことに気づいた」西脇は、その日に辞表を書く。「今後必要なのは、サーバー関連製品、コンシューマデバイス、そしてクラウド。そのすべてをもっている企業を探して、行き着いた結論が今の自分。オラクルにはそれがなかった」。
マイクロソフトでの役割はエバンジェリスト。全製品・サービスの魅力を多くの人に分かりやすく伝えることがミッションだ。要職を求めず、高待遇も要求しなかった西脇が、唯一望んだのが、このポジション。移籍して3か月ほどしか経っていないが、早くも地位を確立している。西脇がつくったプレゼン資料が樋口泰行社長の上司である米本社の幹部の目にとまり、4月中旬に開催された110か国のカントリーマネージャーが集まる幹部会議に参加。クラウドのプレゼンターに抜擢された。そんな立場で起用された日本法人のスタッフは、これまで皆無だ。
「マイクロソフトの全営業マンが熱意をもって自社の製品・サービスをきちんと伝えられるようにしたい。そして、少し先には自分が業界全体の流れをつくることができるようになりたい。12年後? 少なくとも、その時に『今後の12年何をするんですか?』に、明確に答えられる自分でありたい」(文中敬称略)
プロフィール
西脇 資哲
(にしわき もとあき)1969年8月18日生まれ、岐阜県出身。OS/2モジュールの開発や、MS-DOS/Windowsでの業務アプリケーションソフト開発業務、ISPの立ち上げなどを経験した後、日本オラクルに入社。プロダクトマーケティング業務やエバンジェリストを担当。12年間ほど在籍した後、09年12月にマイクロソフトへ移籍し現職に就く。「JavaOne」をテーマに講演した経験があるほか、「iPhone」や「Amazon」関連の講演・執筆にも精力的な活動を展開。マイクロソフトだけでなく、さまざまなテクノロジーに精通する。