ITホールディングスグループのTISは今年4月、日系主要SIerとしては初めて、中国・天津市に最新鋭の大型データセンター(DC)をオープンした。その最前線に営業で飛び込んだのが、今年30歳の若手・小林秀史である。学生時代は陸上一色の体育会系。「体力に自信はあるが、外国語は苦手」と苦笑するが、ボディーランゲージも交えて、体当たりで臨む。
小林のミッションは、現地法人・天津TIS海泰インフォメーションシステムサービス(天津TIS海泰)の営業部門の立ち上げ。中国で十分な販路をもたないTISが採った戦略は、ビジネスパートナー経由での販売だ。直販主体の開発系SIerの同社にとって未知の領域。2008年11月に赴任した小林にとっても「初めての連続」だった。開業前のプレ営業を始めてわずか半年で、「苦心して集めた優秀な営業スタッフが二人も辞めてしまった」と、出端をくじかれることに。
中国のビジネスマンは、日本以上に報酬にシビア。「目標のレベルや達成時の成果と、これに対する報酬が釣り合わなければ、他社へ移る」のが基本。チーム一丸となって…といった日本的な手法はまったく通用しない。苦い経験の後、ふとビジネスパートナーに目を転じると、「実は、彼らも明確な目標をもち、これが報酬と密接に連動している」ことが見えてきた。ならば、彼らの評価が、売り上げなのか、件数なのか、利益なのか、機会をみてそれとなく聞き出した。そして、評価が上がる提案を積極的に行うことによって、自ずと関係は緊密になっていった。
「売り上げが立ち、利益が上がれば、報酬に反映され、達成感を味わえる」。その目標に向かって邁進する。営業組織が完全に立ち上がれば、日本の営業スタッフは身を引いて、あとは現法スタッフに任せる方針。それまでは、“数字を追う鬼”(中国ではとても悪い響きの言葉)と言われようが、喜んで嫌われ役を買って出る」と、鬼軍曹ぶりを発揮する。(文中敬称略)
プロフィール
小林 秀史
(こばやし ひでふみ)1980年、東京生まれ、03年、早稲田大学人間科学部卒業。同年、TIS入社。新規顧客担当の営業部門に配属。のちに産業系の既存大手顧客の営業担当。07年、中国事業部門に配属。08年11月、中国・天津市の天津TIS海泰インフォメーションシステムサービス(天津TIS海泰)に赴任。データセンターサービスの営業を担当。