大学を卒業したのが1986年、日本がバブル景気に浮かれ始めていた頃だった。当時は終身雇用が当たり前で、周囲の学生の多くは金融機関に就職していった。しかし、木下雄介の考え方は違った。「業種はとくに意識していなかったが、自分の裁量が大きい仕事に就きたいと思っていた。そんな希望を叶えてくれる企業として、外資系の日本IBMに可能性を感じた」。
新卒で日本IBMに入社し、外資系企業でほぼ一貫して営業畑を渡り歩いてきた。「経験的には営業が長いけれど、自分に向いているとは思わなかった。けっして人当たりがよいわけではない」。こう話す木下は、負けん気が強い。いったん目標を設定すれば、どんなことでもやり遂げる。
「人の能力には、そんなに差はない。我慢して一歩踏み出せるかどうか。常に前向きに、最後の最後まであきらめないことが大切」。日本IBM時代、営業の現場では新規開拓に挑んだが、なかなか受注に結びつかなかった。それでもあきらめずに、木下なりの“勝ちパターン”を構築。最初の5年間は、週末も休みなく働き、「死ぬ気」で仕事をこなした。
木下が重要と説くのは、誠実さだ。ユーザーからもらった宿題には、できるだけ早く答えを示すこと。当たり前のことのようだが、実践できている人は少ない。「どんなに忙しくても、できれば24時間以内に答えを返す。これで信頼関係を築くことができる」。
常に新しいことを求め、転職を繰り返してきた。日本IBMを退職した後は、日本シーベルの創業メンバーとして参加。外資系企業数社を経て、サクセスファクターズジャパンの設立と同時に代表取締役に就任した。
社員の目標設定やパフォーマンス評価、報酬管理など、企業における人材管理を支援するソリューションを提供し、グローバルで伸び盛りの企業だ。
「とりあえずサクセスファクターズジャパンを立ち上げて、将来は自分でビジネスをやりたい」。夢の実現に向け着々とキャリアを積んでいる。(文中敬称略)
プロフィール
木下 雄介
(きのした ゆうすけ)1962年、兵庫県生まれ。86年3月、慶應義塾大学経済学部卒業。同年、日本IBM入社。97年、日本シーベルに創業メンバーとして参加。その後、日本オラクルなどを経て、08年9月米サクセスファクターズ入社。09年6月、日本法人設立と同時に代表取締役に就任。現在、日本でSaaSによる戦略人材マネジメントシステムの普及を目指し、ビジネスを展開中。神戸大学大学院(MBA)、MIT Sloan EMOTプログラム修了。中小企業診断士の資格をもつ。