「今、この商品はいくらで売れるのか、買えるのか」。こんなユーザーの要望に応えるサービスを展開するネットオークションの比較・相場情報サイト「aucfan」は、月間ユニークユーザー数320万人、5000万PVを超えるウェブサイトへと躍進した。 


　複数のオークションサイトの売買情報を一元管理・表示するので、ユーザーは商品の落札相場などを知ることができる。国内では唯一無二の存在で、「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード2009 特別賞」を受賞するなど、数々のネットサービス系コンテストで高い評価を受けてきた。

　仕掛けたのは、運営会社オークファンの経営者、武永修一だ。32歳の若き起業家だが、もともと経営者を目指していたわけではなかった。「とくにビジネスに興味をもっていたわけではなく、弁護士にでもなろうと思っていた」という学生時代、ネットオークションで小銭を稼いだことが、今の道に進むきっかけになる。「安く仕入れていかに高く売るか、そんな商売の基本が楽しかった」。

　実は、「aucfan」は武永が考案したサイトではない。ある開発者が片手間で制作・運用していたサイトで、武永はそのユーザーだった。利用しているうちに、膨大な情報をもつ「aucfan」に新たなビジネスの可能性を感じ、開発者に頼み込んで譲り受けた。今では、「aucfan」がもつ情報を一般公開してメディア事業を営み、統計データも販売し、その情報をもとにしたマーケティングコンサルティングも手掛ける。武永のアイデアで、ビジネスは広がってきた。

　国内で存在感を示した武永の眼は、次のステップとして世界に向いている。米国や中国の情報も取り入れ、可能性があれば欧州にも手を伸ばすつもりだ。「全売上高の半分は海外で稼ぎたい」と新たな目標を胸に秘めて、事業経営を楽しんでいる。（文中敬称略）