「WAF(ウェブ・アプリケーション・ファイアウォール)というのは、導入すれば企業にとってのメリットは大きいが、導入しなくてもシステム運用上で問題にはならない」と認めるのは、WAF専業メーカーのImperva Japanでジェネラルマネージャーを務める長坂美宏だ。けっして、自社の製品を悲観しているのではない。「そのようにユーザー企業が理解している」ことを言いたいのだ。WAFの優れた点が市場に浸透していないと理解しているからこそ、口をつく言葉である。
「ロードバランサーメーカーが、片手間にWAFを売っていたから、このような状況になった」と指摘する。
しかし、だからといって、これまでImpervaがWAFの良さを訴えてきたのかといえば、そういうわけでもない。実際、長坂がトップに就任した09年8月の当時は、「設立して以来、過去最低の業績だった」という。そこで、長坂が講じた策は、「販社が提案しやすい環境を整備した」ことだった。
具体的には、販社がターゲットとするユーザー企業を長坂自らが訪問して、製品のよさを訴えていく。ユーザー企業によって課題が異なるので、そのユーザーに適した導入事例を説明する。その声をもとに、販社と密にコミュニケーションを図り、ニーズに合った製品・サービスを提供する――というサイクルを販社と構築。これによって、10~12月の四半期から今まで3四半期連続で前年の2倍にあたる売上高を記録している。
これまで、長坂はネットワーク関連機器メーカーを中心に、さまざまなベンダーを渡り歩いてきた。アライドテレシスでは、海外拠点の立ち上げを任されたこともあり、「オフィス設立の登記を含め、本当に一からだったから勉強になった」と振り返っている。
このような経験を含め、「新しいことに挑戦するのが性分」と自己分析する。今は、「WAFという新分野を国内市場に広める」ことを使命としている。(文中敬称略)
プロフィール
長坂 美宏
(ながさか よしひろ)1969年3月24日、北海道札幌市生まれ。91年3月、慶応義塾大学理工学部電子工学科卒業。92年、アライドテレシスに入社、技術部門や営業部門で業務に従事したほか、マレーシアオフィスの立ち上げなどに携わる。09年にImperva Japanに入社。同年8月にジェネラルマネージャーに就任。