立田雅人の仕事は、「クラウドコンピューティングのサービスづくりから市場開発。それと、パートナー企業を獲得すること」だ。しかし、パートナーやユーザーにクラウドサービスのメリットを訴求するとき、「クラウド」という言葉を使わないことがある。「『クラウド』や『SaaS』などはデリバリーする側の都合に合わせたものであって、ユーザーにとってどうでもいいこと」。立田はむしろ、クラウドによる生産性の向上やコスト削減など、「エンドユーザーにとって、何がうれしいか」を考え、クラウドを「課題解決のためのソリューション」として提案することをポリシーとしている。
自社製品をユーザー目線でみるきっかけになったのは、日立製作所に勤務していた時代に、複数の企業が参加した工業会で「マルチメディア」の定義化に携わったことだ。その際、「会社の枠を超えて、マルチメディアは企業にどう役立つかを考えた」ことが立田のビジネススタイルの原点となった。今も、毎週のようにスケジュールに入っているパートナーやユーザー向けセミナーなどで、サービス名を前面に押し出さず、相手に「何をしたいのですか」と、まずは根本的なことを聞く。そのうえで、相手が抱えている課題を把握して、解決策を提案する。
「相手が困っているからこそ、一緒にハッピーになる」。立田がビジネスで最も重視するのは、「自分、チャネル、お客様」の“三方よし”だ。クラウドの市場開発に従事している現在、その理念は具現化しているという。「クラウドは、大きな投資をしないで新しいビジネスができる」というシンプルなメッセージ。立田は今後もクラウドのメリットをエネルギッシュに伝えていく。(文中敬称略)
プロフィール
立田 雅人
(たつた まさと)1989年、慶應義塾大学法学部卒業後、日立製作所に入社。NTTグループ向けマルチメディアシステムなどの再販営業を担当。01年、EMCジャパン入社。04年、ベリタスソフトウェア入社。05年、日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)に入社し、現在はクラウドコンピューティングの企画・開発・運営に従事。