IT業界も市場調査業務もキャリアはまだ2年程度。しかし、藤崎武志が得意とするPC資産管理ソフト市場の、有力メーカー―エムオーテックス(MOTEX)やクオリティなど―の幹部からは、彼の名前が頻繁に出てくる。徹底的に調べ上げたレポートは、メーカー各社から高い評価を得た。市場調査分野の新人は、アナリストとしてのポジションを着実に築きつつある。
藤崎の社会人としての仕事は、外車の営業から始まった。「アルバイトに明け暮れた」という、どこにでもいる学生が、父親の影響を受けて志望したのが営業の仕事だった。「高級車を買う人は社会的地位が高い人。偉い人と話すのは面白そう」。そんな漠然とした理由で、外車のディーラーで働いた。「365日のうち、たぶん360日は働いた(笑)」と豪語するほど仕事に没頭し、その店舗で最年少の主任に抜擢された。だが、そこで藤崎は不安を覚える。「このまま、この仕事をずっとやるのか……」。そして転職を決断する。
この段階でもマーケティングへの興味を抱いていた。「多くの企業を知るためには調査会社が適している。どうせなら、自分とは最も縁遠いITがいい」。それが今の道を選んだ理由だった。藤崎はそれまでITにまったく興味がなかった。負けず嫌いの藤崎らしい選択だ。
「うちの会社って、レポートが売れる可能性があれば何でもトライできる。今の自分にとって仕事のフィールドは無限に広がっている。だから、今は一つひとつ丁寧に調査を積み重ねていきたい」。屈託のない表情で胸を張る。
横文字が飛び交い、曖昧な表現が多いIT業界。藤崎は業界の実態をつまびらかにしようと奮闘している。(文中敬称略)
プロフィール
藤崎 武志
(ふじさき たけし)1982年、神奈川県生まれ。05年、法政大学社会学部卒業。同年、フォルクスワーゲンの販売会社に入社。営業業務に従事した。09年、調査会社のテクノ・システム・リサーチに移籍。アナリストとして活動する。PC資産管理ソフト、ストレージ、サービスマネージメントソフト分野の調査業務を得意とする。