伊藤忠商事の商社マンとしてビジネスに携わってきた高木康廣は、この秋、中国市場に挑む。2011年5月、伊藤忠商事と同社の中国法人、中国のソフト開発大手である東軟集団股・有限公司、そして英国の企業の4社が共同で設立した合弁会社「東軟交通信息技術有限公司」が誕生。高木はその新会社の副総経理に就任したのだ。主に道路の渋滞情報を提供するサービスを展開しながら、5年以内に黒字化するのがミッションだ。8月から本格的に瀋陽市で事業を進めている。
飲食店を経営していた父親の影響で、学生時代から起業意識が旺盛だった高木は、経営を学べる場として商社を選んだ。伊藤忠商事に入社した後は、携帯電話の流通や、通販サイトの構築などに携わり、ビジネスを学んだ。
そんな高木に、猛烈な勢いで成長する中国での仕事が飛び込んできた。伊藤忠商事は、今年度から2か年の中期経営計画を推進している。このプランで掲げた三つの重点施策の一つが、「中国ビジネスの積極拡大」だ。高木は、総合商社の中期戦略の一躍を担うことになった。
08年から中国市場向け事業に携わり、試行錯誤を繰り返してきた高木。悩んだ時期もあった。そんななかで新会社設立にこぎ着けることができたのは、一つの壁を越えた証だ。中国と英国企業の橋渡し役を担い、伊藤忠商事に出資を納得させた。それだけに、今後は、もっと大きな仕事が待っている。
「急成長マーケットに腰を据えてビジネスできることは、自分にとって大きなプラス。伊藤忠に認められる会社になって戻ってくる」。今年の年末には、妻とまだ幼い二人の子どもも瀋陽に移り住む。中国に“コミット”した決意の現れだ。(文中敬称略)
プロフィール
高木 康廣
(たかき やすひろ)1975年、東京都生まれ。98年に東京理科大学卒業後、伊藤忠商事に入社。携帯電話の流通事業やモバイル端末向けコンテンツ配信事業などに従事した後、08年から中国市場向けビジネスに携わる。2011年9月1日に、伊藤忠商事と東軟集団股・有限公司(Neusoft)など合計4社で中国瀋陽市に設立した新会社の副総経理に就任した。