すぐれた腕前をもってモノをつくる職人のことを、英語で「クラフトマン」という。企業向けストレージや研究機関のニーズに最適化した情報システムを開発する、ベンチャー企業のインフォクラフトは、クラフトマンの「クラフト」をとって社名をつけた。社名には、「エンジニアリング力によって、常に新しいモノを創りたい」と願う創業者であり社長の荒川淳平の“職人魂”が込められている。
インフォクラフトは、荒川が大学生のときにプログラミングの仲間と一緒に立ち上げた。荒川を含めて4人の従業員が働いている。オフィスは、東京都調布市にある電気通信大学内のインキュベーション施設に構えている。インフォクラフトの事業活動を大学の研究開発と緊密にリンクさせることによって、「一般企業ではつくれない、斬新で高品質な製品を生み出す」ことを目指している。
中学生の頃から「ベンチャー企業を起こしたい」と夢みてきた荒川が、インフォクラフトを設立した動機は、「大学で研究をするだけでは、つくったモノを世に発信する力が弱い」と判断したからだ。インフォクラフトは今、大手のデータセンター事業者や通信キャリアを顧客にもち、ビジネスは順調に拡大している。今後は、コンシューマ向けの展開も検討するという。
「製品開発にあたって、ひな形はない。既存の価値を再生産することには興味がないからだ」。荒川は技術スキルを磨くべく、日々勉学にいそしみ、社員にもその努力を求めている。新しいアイデアと高い品質を追求することによって、「IT分野でのクラフトマンシップを育てていく」ためである。(文中敬称略)
プロフィール
荒川 淳平
(あらかわ じゅんぺい)1983年、東京都生まれ。2004年、東京工業高等専門学校を卒業後、電気通信大学に入学し、情報工学を学ぶ。05年4月にインフォクラフトを設立。現在、インフォクラフトの代表取締役を務めるかたわらで、東京大学大学院・創造情報学の博士課程に在籍する。