金高慎之介は、長年の経験が必要な金融機関担当のIT営業マンとは思えないほど一風変わった経歴をもつ人物だ。IT業界で働き始めたのは3年半前で、それまでさまざまな業界を渡り歩いてきた。
社会人のスタートは、ファッションモデル。モデルになったのは大学生時代だ。卒業後はロンドンに渡り、その後パリへ。「ロンドンコレクション」と「パリコレクション」のステージで歩いたこともある。世界で活躍していたにもかかわらず、もともと起業意識が強かった金高は、モデルの道をあっさりと捨てて帰国。コンシューマ向けの音楽配信サービスを行うベンチャー企業の立ち上げに携わった。その後、独立して布帛(ふはく)メーカーを設立したが、資金繰りに苦労してあきらめ、不動産会社に転職。そして、08年にアイティークルー(現・ラック)に入社した。チャンスを求めて機敏に動いてきたのだ。
法人向けIT製品・サービスの営業は、未経験者が簡単にこなせる仕事ではない。金高がアイティークルーに転職したのは34歳の時。「仕事を教えてください」とは言えない年齢で、しかも、相手は独特な文化をもつ金融機関。それでも、金高は入社1年目に目標額を上回る実績を残した。
「確かに最初はしんどかった。でも、どんな業界でも、営業がやるべきことは同じ。困っていることを聞き出して、解決手段をなるべく早く提供すること」。金高が大切にしている言葉は「誰にでもできることを、誰にも負けないくらいにやる」。
無定見にみえる金高のこれまでの職業選択。だがそれは、ビジネスチャンスを感じた仕事には、臆することなく挑戦してきた結果なのだ。(文中敬称略)
プロフィール
金高 慎之介
金高 慎之介(きんたか しんのすけ)
1974年6月6日、静岡県生まれ。明治大学商学部卒業。ファッションモデルとして活躍後、音楽配信サービスのベンチャーや不動産会社などを経て、08年12月にアイティークルー(現・ラック)に入社。家庭では、2児の父親。最近は、早帰りして子供の面倒をみながら自宅で仕事することが増えた。