渡部秀博が「電源」に興味をもったのは、小学生の頃だった。電波をエネルギーにすることで電源が不要となるゲルマニウムラジオのキットを組み立てたのがきっかけだ。「電池を使わなくても、ラジオが聴けることに感動した」と振り返る。その後、渡部は米国の大学でリスク管理を学び、UPS(無停電電源装置)メーカーのAPCジャパンなどで、電源に関連するビジネス開発の経験を積む。そして昨年2月、KVMスイッチや、電源管理ツールの開発に力を注いでいるラリタン・ジャパンに入社した。その時は、2か月後に東日本大震災によって電力供給不足という事態が生じることなど、想像だにしていなかった。
「震災後の電力供給危機によって、急な停電などのリスクとどうつき合っていくのかが、企業の大きな課題として浮かび上がった」。この危機によって、企業や国民は、電力が無限に存在するものではないと認識し、とくに多くの電力を消費するデータセンター(DC)事業者は、急ピッチで節電に取り組んできた。リスク管理の専門家で、「電源」をライフワークに掲げる渡部にとって、この1年はまさに腕のみせどころだった。DC事業者を筆頭に、個別のお客様のリスクを分析し、ラリタンは何ができるかを考える活動を推進し、電源の見える化ソリューションを提案してきた。
「IT環境の節電対策は、まず、電源の監視・管理から始まる」と語る渡部。今はDC事業者を主なターゲットに据えているが、今後、市場をオフィスや工場、一般家庭に拡大する。「電源」に情熱を燃やす渡部の次のチャレンジだ。(文中敬称略)
プロフィール
渡部 秀博
渡部 秀博(わたなべ ひでひろ)
1996年、APCジャパン(現シュナイダーエレクトリック)に入社し、OEM営業やビジネス開発に携わる。パンドウイットコーポレーション日本支社を経て、2011年2月にラリタン・ジャパンに入社。東日本大震災後、パワービジネス ディベロップメント マネージャーとして、節電ソリューション事業をリードしている。