斉藤芳宜は、「学生時代、とくに自分の進むべき道を決めていたわけではなかった」ので、親しかった先輩が勤務する企業に就職した。NTT西日本だ。ネットワークインフラの整備に携わり、出身地である福井県のオフィスに配属となり、中小企業を対象に高速ブロードバンドの普及に力を注いだ。その後、データマイニングを使った顧客管理の実現など、新しい製品・サービスを創造する事業の立ち上げに参画し、中小企業に広めるためにはコンサルティング力が必要と判断して、中小企業診断士の資格を取得した。
資格取得の際、中小企業をコンサルティングする実習で、経営者に対して自分が考えたビジネスモデルを提示したところ、高い評価を受けた。「うれしくなって、熱い感情がこみ上げてきた」。中小企業を成長に導く仕事に従事したいと考え、船井総合研究所に入社した。
IT業界の中小企業向けコンサルティング業務に携わることになって疑問を抱いたのは、大企業を頂点としたピラミッド型の多重下請け構造だった。「中小規模のソフトハウスは、下請けから脱却しなければならないと感じた」という。
入社当時に抱いた疑問は、今でも拭い切れていないそうだ。1985年に主流だったハードビジネスから、インターネットの登場でソフトビジネスが台頭し、そして今はクラウドを中心にサービスビジネスの時代へと突入しようとしている。「中小規模のソフトハウスが下請けで培ってきた開発力を生かして独自のアプリケーションサービスを創造するなど、何らかの強みをもつことが重要」と捉え、「下請けから脱却できるように、ビジネスモデルの変革を促していきたい」と使命感を燃やしている。(文中敬称略)
プロフィール
斉藤 芳宜
斉藤 芳宜(さいとう よしのり)
1974年7月14日生まれ。福井県出身。97年3月、神戸大学経営学部卒業後、同年4月、NTT西日本に入社。新規事業立ち上げのチームリーダーなどを務める。04年10月、船井総合研究所に入社。IT企業のコンサルタント業務のほか、全国のIT企業経営者を組織化し、高収益企業の輩出を目指す勉強会「ITベンダー経営研究会」も主宰。