吉武修平は、中国・北京の首都師範大学に留学中、ガツガツした中国の学生のハングリー精神に強い影響を受けた。複数のショッピングモールに出店するネット店舗の在庫管理が課題になっていたことに着目し、2006年に起業。「ハングリー精神で時代をリードする会社をつくろう」と考えて、社名を「ハングリード」とした。だが、いかんせん手元資金が10万円しかなく、へたをすれば1か月でショートしかねない状況だった。最初は受託ソフト開発で食いつなぎ、3年目にして待望のネット通販ショップ事業者向け多店舗在庫管理システム「zaiko Robot」のサービスをスタートした。
楽天やYahoo!、ビッターズといったモールに出店する場合、例えば10個の在庫をそれぞれの店に3個、3個、4個などと振り分ける。楽天で3個の在庫が売り切れても、「他の店に7個の在庫が余っているケースも少なくない」。ほぼリアルタイムで各店舗の在庫を把握できるロボット巡回方式の管理システム「zaiko Robot」を使えば、各店に10個ずつ在庫を置くことができる。在庫数は実際より多い都合30個になるが、そこは仮想店舗の便利さ。実在庫の10個が売り切れた時点で受注を止めればいい。
ロボットによる巡回は、不用意にシステム負荷をかける他のプログラムと区別がつきにくいので、モール側の管理者から警戒されるのが常だ。このため「当時はロボットに人間の動きにできる限り近い動作をさせることで、警戒されないよう気をつけた」と振り返る。その後、商品管理や受注管理ロボットなどのサービスラインアップも増やし、大手モールとも正式な契約を交わしてサービスを提供している。「3年で、今の10倍に当たる1万社の顧客獲得を目指す」と、尽きぬハングリー精神で業界をリードしていく。(文中敬称略)
プロフィール
吉武 修平
吉武 修平(よしたけ しゅうへい)
1975年、香川県生まれ。99年、中国の首都師範大学を卒業。教育系ソフト開発会社入社。05年、信州大学大学院工学系研究科修士課程修了。06年、ハングリードを起業。主力サービスの多店舗在庫管理システム「zaiko Robot」は、クラウドサービス「ニフティクラウド」のインフラを活用している。