「自分は集中力があるほうだと思う」と、新井一人は自負している。ゴールに到達するために、きめ細かくシナリオを描き、どう行動すればいいかをじっくり考えるタイプだ。
新井は、大手セキュリティメーカーのトレンドマイクロで法人事業のマーケティングを統括する立場にいる。2007年に同社に入社し、アンチウイルスなどのセキュリティ製品に、販売パートナーがユーザー企業の現場で行う運用・管理サービスを追加して提供するビジネスモデルを確立した。
ビジネスモデルの立ち上げにあたって、新井はまず、台湾に拠点を置く開発チームと密に連携を取るようにした。毎週のように台湾に出張し、日本のユーザーや販社から汲み取ったニーズを、言葉の壁を越えて、開発チームに正確に伝えることに時間をかけた。また、台湾で開発した新しいサービスを国内で広めるために、日本のパートナー企業とコミュニケーションを取って、共同でアクションプランを練った。
「まるでカレーライスをつくるようなもの。あらゆるところから材料を集めて、料理のためにコーディネートするような役割だ」と語る。
新井は現在、「アジア地域に対して、日本ができることは何か」を考えている。マレーシアやインドネシアなど、各国に足を運んで、現地に進出している日本企業のセキュリティに関するニーズを把握するためのヒアリングに、精を出している。
すぐれた集中力を生かし、行動をきちんと計画立てることによって、アジア地域で日系企業向けのビジネスを強化することに励んでいる。(文中敬称略)
プロフィール
新井 一人
新井 一人(あらい かずと)
東京理科大学大学院の理学研究科修士課程を修了後、川崎製鉄(現JFEスチール)でIT先端技術実用化を研究。1998年に情報セキュリティ企業への転職を機に、セキュリティ事業に携わる。プロダクトマーケティングやコンサルティングの統括を経て、2007年、トレンドマイクロに入社。ソリューション型新規商材の市場投入に従事。2011年11月から現職。