寺本幸司は、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループが2012年10月に首都圏で開業した2300ラック相当の大型最新鋭「西東京データセンター(DC)」の営業を担当している。事業は順調に立ち上がっているものの、ここに至る道のりは決して平坦なものではなかった。同社にとって初となる大型DCだが、知名度の面で先行する大手ベンダーに比べて圧倒的に不利だったからだ。
開業から1年半ほど前、西東京DCの販売プロジェクトメンバーに抜擢された寺本は、「東日本大震災でBCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)の意識がユーザー企業の間で高まり、他社DCがどんどん成約していく状況にあって、なぜか当社DCへの問い合わせはほとんどゼロ」という厳しい現実に直面した。キヤノンのグループ会社が大型DCを建設中であることを「ユーザーの誰も知らない」ことが原因だった。
親会社のキヤノンMJグループがもつ複写機の販売ノウハウとは異なる売り方が求められることも、立ち上がりを鈍らせる要因となった。「メンバーの仲間とともに、まずはユーザー企業の代表番号に電話をかけて情報システム担当者につないでもらったり、無料のセミナー告知サイトにDC活用セミナーの案内を載せたり」という活動を、手探りで半年ほど続けた。
寺本らの懸命な努力は、やがて全社の販売意識を刺激し、事態は打開へと急展開していく。開業まで1年を切ったタイミングで、広報宣伝や営業活動など全社的な販促活動が本格化された。
販売会社だけあって、いったん全社的に動き出せば、告知力、営業力は絶大だ。「開業が近づくごとに知名度が高まり、引き合いが増えてきた」と、寺本は自信に満ちた表情をみせる。(文中敬称略)
プロフィール
寺本 幸司
寺本 幸司(てらもと こうじ)
1977年、大阪府生まれ。99年、関西大学工学部を卒業してキヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)入社。00年、法人向けインターネットサービス「Canonet」の立ち上げに従事。05年、キヤノンネットワークコミュニケーションズ(現キヤノンITソリューションズ)でデータセンター事業に従事。現在に至る。