エバンジェリスト(伝道者)という職業柄か、高添修は、柔らかな人あたりのなかに確かな芯を感じさせる。浮わついた派手さとは対極の雰囲気をまとう。
「仮想化」がIT業界のキーワードとして浸透するとともに、高添は一気に際立った存在感を放つようになった。仮想化をベースにしたダイナミックITのポテンシャルを、2000年代の初頭の時点で誰よりも本質的に理解していたという自負が彼にはある。Hyper-Vの黎明期、仮想化技術では他社に後れをとっていた時期から、パネルディスカッションなどの対外試合でマイクロソフトの顔として戦ってきた。
意外にも、社会人としてのキャリアの序盤は「ネガティブな軌道修正の連続」だったという。大学まで地元の福岡県で過ごし、オービックに採用された。福岡勤務を希望したが、配属先は東京。オフコンの納品、修理、点検などを担当するハードウェアエンジニアとして、8kgもある工具カバンを抱えて都内を巡回する日々だった。高添は当時を「福岡に帰りたくてしかたがなかった」と振り返る。
その後、オフコンからパソコンへの転換期にネットワーク関連の営業部門に異動したが、上司と衝突し、1年も経たずに教育部へ。これが人生の転機になった。トレーナーとして携わった新人研修で「自分の言葉で人が変わり、成長するのを目の当たりにして、その喜びに気がついた」。
この「伝えることの喜び」が、今も高添を駆り立てる。エバンジェリストとして、自らが目指すプレゼンの「必勝パターン」はすでに完成しつつある。「数字のインパクトに頼るのではなく、自分の気持ち、メッセージを前面に出し、聞く人の心をつかむ。それが市場の数字となって返ってくる世界をつくりたい」。(文中敬称略)
プロフィール
高添 修
高添 修(たかぞえ おさむ)
福岡県出身。福岡工業大学を卒業後、1992年、オービックに入社。99年からはマイクロソフト認定トレーナーとして、OS、Active Directory、Exchange Serverなどのセミナー運営に従事。2001年マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に移籍。パートナー担当SEを経て、2005年よりエバンジェリスト。イベントやセミナーの企画・講師、雑誌やウェブ媒体への記事執筆、案件支援などを担当。