データセンター(DC)を事業の根幹に据えるIDCフロンティアには、日本のDC業界に数多くの革命を起こしてきた男がいる。社長室室長を務める山中敦だ。山中は、これまでのキャリアで、一貫してDCの企画・設計に従事してきた。
2008年に竣工した北九州のDC、「アジアン・フロンティア」では、サーバーから出る熱を冷やすための空調に、日本で初めて外気を取り入れた。当時、日本では異端の発想であったことから、競合のDC事業者からは「正気の沙汰ではない」と揶揄された。しかし、四半期に一度は海外を視察し、最先端のDCを見てきた山中には自信があった。結果として「アジアン・フロンティア」は省電力性が高く評価され、第36回環境大臣賞など、国内外の複数の賞を受賞。今では、多くのDC事業者が外気空調を採り入れている。
12年10月に開設した福島県の白河DCでは、アジアン・フロンティアで蓄積した運用ノウハウを生かして、排熱にDC施設内の上昇気流を利用した空調システムを世界で初めて実現した。「現状に満足せず、常識を疑って、それを覆す」という山中のモットーが、DCのイノベーションを実現する原動力となっている。
しかし、山中にとって「これらの実績は過去のものでしかない」。現在は、DCの企画・設計だけでなく、社長室室長として事業戦略や収益計画の統括、海外パートナーとの折衝などを担当している。さらに、日本データセンター協会の運営委員として、海外で講演会を開催し、世界に日本のDCの品質の高さを伝えている。
現在の目標は、「世界最先端のデータセンターで日本をDC立国すること」。山中の野望は、着々と実現への道を突き進んでいる。(文中敬称略)
プロフィール
山中 敦
山中 敦(やまなか あつし)
1978年生まれ。幼少時代を海外で過ごし、英国の大学を卒業後、2000年に日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)に就職。06年にはソフトバンクIDC(現IDCフロンティア)に転じた。キャリアを通して、DC事業の企画・設計に従事している。現在は、経営面にまですそ野を広げ、社長室室長としてDC事業計画やパートナー戦略の一端を担う。日本データセンター協会の運営委員を務めている。