一見して、タフガイ。ジム通いは長年の習慣だ。法政大学ラグビー部のフランカーとして活躍し、大学院では建設工学を専攻。就職先はスーパーゼネコンが既定路線だった。しかし、富岡洋一はそんな予定調和に満足できなかった。
PCとインターネットが一般にも本格的に普及し、IT業界が社会的に大きな脚光を浴びていた時代。テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」でCMが流れるサンマイクロやシスコシステムズに憧れた。「衰退している業界より、ダイナミックに動いている業界で働きたかった」のだ。
希望通りに入社したシスコシステムズでは、e-Japan戦略をスタートさせた国の研究機関や中央官庁を担当した。大きな商談をいくつも手がけ、ユーザーとも良好な関係を築いたが、物足りなさも感じるようになる。「シスコという大きな看板の下で仕事をするのは楽だったが、新しい経験がしたくなった」
そして2006年に転職したインド系のコンサルファームHCLで、「タフな精神」も身につけた。「海外でのビジネスは、議論を恐れず、最後まで考え抜く心の体力が求められる。大学で学んだロジカルな思考法と合わせ、大きな財産になっている」という。
現在は、iOSとAndroid OSのMDMで世界1位のシェアをもつモバイルアイアンで、日本市場の営業を一手に担う。とはいえ実態は、リード発掘から案件のクローズ、ユーザーサポート、マーケティング、広報、契約書作成までこなす「何でも屋」。「忙しいけれど、やりがいは二重丸」と笑う。「日本は恵まれた市場。経済規模が大きく、営業対象の大企業も多い。加速度的に市場が拡大する手応えがある」と話す富岡。タフな心とからだをフル稼働させ、日本市場を切り開く。(文中敬称略)
プロフィール
富岡 洋一(とみおか よういち)
1976年11月生まれの36歳。2001年、法政大学大学院建設工学専攻修了後、シスコシステムズに入社。政府の電子政府政策進展に伴って社内で新規に発足した官公庁営業部に配属され、中央省庁や政府研究所の営業を担当した。2006年にインド系ITコンサルファームのHCL、2010年にはクラウドサービス大手のセールスフォース・ドットコムに移籍。2012年1月よりモバイルアイアンで現職。日本市場の営業責任者を務める。