齋藤将平は、アイレットを日本有数のクラウドインテグレータに育て上げた。この6月、クラウドサービス大手のAmazon Web Services(AWS)の最上位パートナー「プレミアコンサルティングパートナー」に、野村総合研究所(NRI)とともに日本で初めて選出された。これまで世界で15社しか選ばれていない狭き門だ。
40年余りの歴史がある国内システム業界は大手集約が進み、ユーザー企業にも自らの業務システムを小さなシステム会社に託す理由が見当たらない。齋藤は、「最先端を追い求める技術者集団であり続ける」ことで、たとえ会社の規模は小さくても、個々人の新技術への探究心やモチベーションを高めることで仕事を獲得してきた。
AWSのデータセンター(DC)がまだ国内になかった頃は、ユーザー企業に「クラウドでさえどうかと思うのに、ましてやサーバーを外国に置くのはちょっと……」と、よく難色を示された。しかし、あるプロジェクトで予想以上のシステム負荷に見舞われ、にっちもさっちも行かない状態に陥ったとき、齋藤はユーザーに「アメリカにパブリッククラウドというサービスがあります。これを使えばなんとかなる」と提案。負荷の一部を米AmazonのDCへ逃がすことでピーク時負荷を乗り越えた。アイレットが本格的にAWSを使い始めたきっかけだった。
「社員一人ひとりが新しい技術に食らいついて、活発な議論をこなし、ユーザーの役に立つ」。AWSのような世界規模の巨大インフラを個人レベルで使えるようなった今だからこそ、小さな会社でも新しいビジネスチャンスをつかむことができる。齋藤は「おそらくAWSは、当社のこうした貪欲な姿勢に共感したのだろう」と屈託のない笑顔をみせる。(文中敬称略)
プロフィール
齋藤 将平
齋藤 将平(さいとう しょうへい)
1977年、千葉県生まれ。システム会社で業務アプリケーションの開発や、ウェブ予約システムの設計・構築などに従事。2003年、アイレットを設立して代表取締役に就任。