多くのIT企業が動画をマーケティングに活用し始めた。文字や静止画では伝えきれない商品の特徴を、動画を使って訴える。IT資産管理ソフト開発・販売のクオリティソフトもその効果を認めて、1年ほど前から本格的に制作を開始。ユーザーへのPRだけでなく、販売パートナーの販促資料としても使い始めている。
伊藤春菜は、この動画マーケティングを軌道に乗せた人物だ。およそ1年前に現部署に異動して、PR動画の制作を任された。「経験はまったくないのに、『つくれ』とだけ言われて、あとは放っておかれて……」。そんな経緯で制作に携わることになったが、初めてつくったPR動画は上司がつくった動画の5倍を上回る閲覧回数を達成した。社運をかけて取り組んだ主力ソフト「QND」の新版のPR動画も、伊藤の作品。こだわったのは「わかりやすさ」だった。
入社3年目のプロパー社員。高校まで浜松で暮らし、大学進学を機に上京。アパレル業界に興味をもっていたが、「就職超氷河期に、ぜいたくは言えなかった」。「産業として伸びそうかなと思って」IT企業をいくつか受験し、クオリティを選んだ。「法人向けITのことなんて知らないし、わからないことだらけです」。
一見すると、どこにでもいそうな若手社員。それがIT資産管理ソフト大手の新しいマーケティング施策をリードしている。ITに興味がなく、知識も豊富でないがゆえに、初心者の立場でわかりやすく伝えられる強さがある。聞き慣れない横文字とわかりにくい省略語を使って説明するIT業界人が多いからこそ、彼女の存在が際立ち、ユーザーやパートナーに受け入れられた。伊藤がもつ視点が、エンタープライズIT、とくにSMBに対する有効なマーケティングを確立するのかもしれない。(文中敬称略)
プロフィール
伊藤 春菜
伊藤 春菜(いとう はるな)
1989年、静岡県浜松市生まれ。大学卒業後、クオリティに入社。自社セミナーの企画・運営に携わった後、クオリティソフトに転籍して営業戦略室に配属。マーケティング業務全般を担当する。