吉谷愛は結婚して3週間が過ぎた頃、夫が事故に遭って仕事ができなくなってしまい、ペーパーカンパニーだったフロイデを父から引き継ぐことにした。結婚する前にプログラマの仕事に就いていた経験を生かして、システム開発のプロ集団をつくろうと考えたのだ。しかし、無名の会社なので高い給料が出せない。当然ながら、優秀な技術者は集まらない。
家庭と会社の大黒柱として、ビジネスを成功させなければならない。決断したのは、未経験者の採用だ。フリーターを積極的に雇い、同じ目線に立ったレクチャーを通じて自分の知識を伝え、システム開発の楽しさを感じさせる。
フリーターをシステム開発のプロに育てるというのは、決して簡単な仕事ではない。吉谷は、オープンソースのウェブアプリケーションフレームワークである「Ruby on Rails」などの最新技術の修得を社員に促し、スキルの向上に力を注いだ。その努力が実を結んで、現在、福岡本社のほかに、北九州と東京に事業所を構えて全国展開し、ビジネスを順調に伸ばしている。
未経験者を活用してビジネスを伸ばしてきた経緯を踏まえて、いま取り組んでいるのは、エンジニア育成をビジネスの新たな柱として立ち上げることだ。従来のシステム開発事業を社員に任せ、講師を務めるなど、教育現場の第一線で活躍している。
「ウェブアプリケーション開発のニーズが高まり、『Ruby on Rails』の研修に対する需要が旺盛だ」と、新規事業に手応えを感じている。「上から目線で難しく説明するのではなく、個人を重視してわかるまで教える」という独自のスタイルを武器に、事業拡大を図る。(文中敬称略)
プロフィール
吉谷 愛
吉谷 愛(よしたに あい)
1972年生まれ、福岡県出身。プログラマなどを経て、20年ほど前にフロイデの代表取締役社長に就任。システム開発を手がける。現在は、メインフレームから「Ruby on Rails」までの幅広い開発経験や未経験社員への技術指導経験を生かして、技術講師としてソフトウェアエンジニアの育成に注力している。