金井崇は、データセンター(DC)大手のIDCフロンティアでIaaS型クラウドサービスの立ち上げに尽力した若手技術者だ。福島県白河市や北九州市などにある主力DCを結んだクラウドサービスは、今や同社の看板サービスに成長した。直近では分散システム技術を活用したオブジェクトストレージの立ち上げに従事するなど、新サービスの創出をリードする。
大学院では素粒子理論を研究したが、大学には残らず、エンジニアとして社会に出た。理系出身といえども、分野が異なるので、エンジニアとしては苦労の連続。「コマンド通りに動くはずのコンピュータが動かない。まるで自分がエンジニアであることを否定されているようでつらかった」。競争力のあるサービスをつくるには、欧米の先進的なITを貪欲に取り込む必要があるが、新しい技術はどうしても不具合が避けられない。
それでも、金井が数々の有力サービスを立ち上げることができたのは、自ら積極的にプロジェクトに参加し続けてきたからこそだ。最初は小さなプロジェクトでも、「人や組織に働きかけて、技術的裏づけを取るコツさえ身につければ、サービス立ち上げは可能。あとは目の前のチャンスにはすべて挑んでいくのみ」と話す。
GoogleやAmazonのような「世界大手とのギャップはまだあるが、まずは彼らが使う最先端のハードやソフトをできる限り自分たちも使う。不具合も含めた課題を共有できるポジションにいれば、ひょっとしたら自分にも次の時代を切り拓く突破口を見つけられるかもしれない」と考える。イノベーションとプロジェクト遂行力を組み合わせれば、世界をあっと言わせる新サービスの立ち上げもみえてくるはずだ。(文中敬称略)
プロフィール
金井 崇
金井 崇(かない たかし)
1981年、岐阜県多治見市生まれ。06年、京都大学大学院理学研究科卒業。同年、セキュリティ関連の会社で主にOSのセキュリティ設定を担当。08年、ソフトバンクIDC(現IDCフロンティア)入社。