産業革命後の19世紀英国では、急速に進む近代化に対する一種のアンチテーゼとして、自然風景や神話・伝説などを題材に、鮮やかな色彩で細密、写実的な描写をするムーブメントが美術界に起こった。その中心にいた、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティや、その弟子であるエドワード・バーン=ジョーンズらの絵画を愛してやまない。「マイナーなので、インタビュー記事に書いてもらっても誰もわからないかも」と、苦笑いしながら教えてくれた。
蠣崎宏美は、子どもの頃から絵を描くことは大好きだったが、徐々に、作品の背景や画家のバックボーンを深く掘り下げることに、より大きな関心をもつようになった。画集を見たことがきっかけで彼らの絵柄やタッチに惚れ込み、この時代を専門に扱う研究者がいた学習院大学に短大から編入して美術史を学んだという経歴をもっている。
彼女を動かすのは、未知への好奇心だ。IT系ウェブメディアの広告営業に新卒で飛び込み、2年後、自分のクライアントだったインフォアに引き抜かれるかたちで移籍した。インフォア担当の営業としての仕事ぶりはもちろん、緊張とは無縁で、物怖じせず、明るくポジティブな蠣崎のキャラクターが評価され、新設されたインサイドセールス部門の戦力として白羽の矢が立ったのだ。「当時は、インフォアが強い製造業に関して何も知識がない状態。それでも、不安よりも新しいことができるという好奇心のほうがずっと大きかった」と振り返る。
貪欲に社内外で人脈を築き、あらゆることを吸収しようと試みた結果、ERP営業のスペシャリストに成長した。パートナー営業に移った今も、その好奇心を原動力に、新しいパートナー、新しいビジネスを開拓し続けている。(文中敬称略)
プロフィール
蠣崎 宏美
蠣崎 宏美(かきざき ひろみ)
2007年、学習院大学卒業後、IT系ニュースサイトを運営する朝日インタラクティブに入社。2009年、インフォアジャパンに移籍。入社後は既存顧客向けのインサイドセールスを担当。2013年、パートナー営業本部に異動。中堅パートナーを中心に、ERP、BI、SCM、設備保全管理システムなどの拡販に注力している。昨年1年間で15件の案件で契約にこぎ着け、そのうち新規ERP販売が5件、大型のグローバル統一ERPプロジェクトが2件と着実に結果を残している。