山下武志はAndroidのエキスパートである。スマートフォンやウェアラブル端末向けのソフト開発を行うかたわら、直近では省電力型Bluetooth(BLE)を活用したビーコン(無線標識)システム基盤「BLEDriver」の製品化に取り組んできた。
ゲーム好きで、専門学校を卒業して携帯電話向けのゲームソフト開発会社に就職。寝食を忘れてゲーム開発に没頭した。「自分のつくったゲームがヒットすれば確かにうれしいが、しかし、あまりに熱中しすぎて、外部環境がどう変わったのかわからなくなっている自分がイヤ」になり、会社を辞めた。
モバイル機器の素地があったことから、AndroidをはじめとするGoogleの技術に特化したトップゲートの加藤昌樹社長の下で働き始める。加藤社長の理解を得つつ、「以前のように開発だけにのめり込まないように気をつけた」。趣味でスポーツ自転車をやり始め、心拍やクランク回転の数値データをBLEで自作のスマートフォンアプリに転送したりする技術に興味をもつ。これがきっかけになって、冒頭の「BLEDriver」の製品開発につながった。また、自転車は両手がふさがるので、Android Wear搭載のウェアラブル端末も実際に購入した。「メガネや時計はもちろん、今後はあらゆるものがウェアラブル化する」ことを実感する。以前のように仕事一辺倒では、まわりの変化に気づかなかっただろう。
この夏、子どもが生まれたのを機に、仕事の時間も朝型に変えた。夕方は早く帰って家事と子育てをしながら、「この子が物心つく頃には、どんな社会になっているのかを想像する」。今は、あらゆることに関心をもつことができるそうだ。「子どもといっしょに、次のビジネスも育てていく」と笑顔で話す。(文中敬称略)
プロフィール
山下 武志
山下 武志(やました たけし)
1986年、茨城県生まれ。08年、日本電子専門学校ゲーム制作研究科を卒業。同年、携帯電話向けゲームソフト会社に入社。10年、トップゲートに入社。Android OSのエキスパートとして開発に従事。趣味はゲーム、スポーツ自転車。