「すぐれた製品をつくりたい。そのためには、勇気ある投資が不可欠だ」。龍凌雲は、ECMソリューション「edoc2」の研究開発に、毎年、会社の総コストの60%をつぎ込んでいる。edoc2は、文書管理のしやすさが高く評価されて、PFUやキヤノン、東芝、コニカミノルタといった大手ITメーカーと提携。各社のスキャナやOCR(光学式文字認識)製品から取り込んだデータを集中管理できる仕組みを構築している。
導入企業数は1200社に及ぶ。とはいえ、これまでの道のりは順風満帆ではなかった。起業した頃は、スポーツのポータルサイトに挑戦したが、ユーザーの数が伸びず挫折。その後はシステムの受託開発を始めたものの、案件ベースのビジネスに将来性を見出せなかった。父親は龍が学んだ同済大学の教授で、主体性をもって決断するようにと育てられた。「受託開発は、顧客によって仕事の内容が変わる。しかし、自分は他人にコントロールされることを嫌う性分。自らつくり出したものを広げていきたいという気持ちが強かった」。
いろいろな企業をみていくうちに、どの企業も社内に散在するデータをうまく管理できていないと気づく。そのことが、edoc2を生み出す動機となった。初受注した際には「自分の製品を使ってくれる人ができたことが、最高にうれしかった」。
夢は、ECM領域で一番の存在になること。「edoc2は、自分にとって子ども同然の存在。仮に、目の前に他の魅力的なビジネスがあったとしても、それを放棄して、この子の成長に専念する」と、固い意思をみせる。2015年には、第一歩として、全国中小企業株式譲渡システム(新三板=店頭市場)への登録を予定。わが子の成長を願う父親の瞳は、今日も輝いている。(文中敬称略)
プロフィール
龍 凌雲
龍 凌雲(Leon Long)
1979年、中国・北京市生まれ。2000年、同済大学を卒業して、ビルソリューションを手がける米Johnson Controlsに就職。8か月後に退職し、学生時代の同級生と共同で、かねてから計画していたIT企業の上海鴻翼数字計算機網絡を設立し、総経理に就任。現在、文書管理を強みとするECM(エンタープライズコンテンツ管理)ソリューション「edoc2」を提供している。