「時間に余裕がある知人にプログラミングを教えるところからスタートした(笑)」。鈴木史郎はシステム開発に携わっていたが、父親が経営していた鈴木商店を継ぐために、就職先の東京の会社から大阪に戻ってきた。ただし、鈴木商店の事業は印刷関連で、システム開発はまったくの畑違いだった。
昼間は印刷関連事業、夜は知り合いのホームページ制作という状況から始めて、クチコミでシステム開発事業を大きくしてきた。とはいえ、知名度に乏しいので、技術者を集めることができない。知人にプログラミングを教えたのは、そのためだ。
「地元で頭がいいのにくすぶっている友人がいた。まったくの素人だったが、すぐにプログラミングを覚えてくれた」。優秀な人材が揃った頃には、鈴木商店はシステム開発会社になっていた。今では“大阪のクラウドシステム開発会社”を標榜するほど、クラウド分野で知られる存在だが、それに限らず、少数精鋭の技術者集団として高い評価を得ている。
社員の技術力を高めるために、鈴木は仕事の環境にこだわっている。例えば徳島オフィスの「美雲屋」。自然が豊かで、海も近い。釣りをしながら海を眺めると、いいアイデアが浮かんでくる。大阪オフィスの社員が出張して、美雲屋で開発会議を開くこともあるという。
今、事業で力を注いでいるのは、製薬企業向けに開発したSFA(営業支援システム)のパッケージ化だ。「受託開発だけでは、常に回している状態になるので、技術者も疲弊しがち。パッケージシステムという事業の柱を増やすことで、その問題を解消したい」。環境あってこその技術力である。(文中敬称略)
プロフィール
鈴木 史郎
鈴木 史郎(すずき しろう)
1999年、神戸大学工学部卒業。2000年、フューチャーシステムコンサルティング(現フューチャーアーキテクト)に入社。04年、印刷関連の事業を営む鈴木商店でシステム事業部を設立。資金0円で新規事業を立ち上げた。09年10月に代表取締役に就任。13年9月に徳島クラウドオフィス「美雲屋」を開設し、話題となる。事業については「楽しいかどうかが判断基準。楽しいことをやっていると仲間が集まってくる。応援してくれる」がスタンス。趣味は、釣りとサーフィン。