日本オラクルで順調に営業マンとしてのキャリアを重ねていた藤垣慶介は、リーマン・ショックの激動の波をかぶって、営業成績こそ落とさなかったものの、「このまま何となく年齢を重ねていってしまっていいのだろうか」との思いを強くした。そして、青山ビジネススクールの門を叩いたことが、クラウドキャストの創業者で代表取締役の星川高志との出会いにつながることになった。
スマートフォン向けの経費精算アプリベンダーであるクラウドキャストは、業務ソフトベンダーである弥生と資本・業務提携関係にあり、弥生との連携製品、独自製品とも、急速にユーザーを拡大している。マイクロソフトでエンジニアとして活躍した星川と、オラクルでトップ営業マンとしてならした藤垣との連携が、強烈な化学反応を起こしつつある。
藤垣の営業マンとしてのポリシーは、顧客の課題は何か、それを解決するために何が必要かという視点が絶対にぶれないようにすること。そのうえで、「社内も含めたステークホルダーの利害調整をうまくできれば、ビジネスはうまくいく」。オラクルで学んだ営業の極意であり、営業マンが果たすべきミッションでもあると信じている。
製品開発の人材をグローバルで調達しているクラウドキャストでも、このノウハウは存分に生かされている。「開発やサポートの人間をリスペクトしてはいるが、やはり社内で意見がぶつかることもある。でもユーザーのニーズを誰よりも知っているのはセールス。セールスがガンガン要望をぶつけないと、マーケットを切り開く製品は生まれない」と自負する。究極の目標は、日本社会そのものの労働生産性を高めること。成長する業界で楽しく働きたいという思いは新卒の頃そのままに、経験に裏打ちされた泥臭い営業スタイルを武器にして、ハードな目標に挑む。(文中敬称略)
プロフィール
藤垣 慶介
藤垣 慶介(ふじがき けいすけ)
1977年7月生まれ。東京都出身。2001年、青山学院大学理工学部経営工学科卒。現ベリトランス(旧サイバーキャッシュ)でのインターンを経て、新卒で日本オラクルに入社。セールスコンサルタントとして金融機関向け製品の技術を担当。2004年、ベンチャー企業に移籍するも、2005年、日本オラクルに復帰。2013年度には、Exadataの年間最大販売台数を達成し、社内表彰を受ける。2014年5月、クラウドキャストに営業・マーケティングの責任者として移籍した。2011年に青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)を修了し、経営管理修士に。