会社はチームプレーで成り立っている──。小猿雄一がネットプロテクションズで働く重要なきっかけとなったのが、この“チームプレー”というテーマだった。学生時代、縁あって知り合った経営者に師事しつつ起業。手始めに飲食店を開き、店舗を増やすとともに、B2Bのマッチング会社も立ち上げた。事業は順調に拡大。持ち株会社をつくって、傘下に複数の事業会社をもつまで成長する。
小猿の父親は大阪の魚市場でエビの卸売りをしていた。幼い頃は「朝もまだ暗いうちに市場へ出て、父親を手伝った」といい、自身もまた漠然と「大きくなったらオヤジのような経営者になる」ことを思い描いていた。「できれば競馬の馬主になれるほど稼ぎたい」というのが、小猿の夢だった。
しかし、ビジネスは順調だったのに、従業員が次々と辞めてしまった。経営者としてよかれと思って打った施策が従業員には通じない。「なぜなのか? どうすれば人の痛みがわかる経営者になれるのか」と悩んだ挙げ句、「もっと現場を知らなければ」との師匠の助言を得た。当時、複数兼務をしていた役員をすべて退任することを決意した。決済サービスのネットプロテクションズで新規事業「FREX B2B後払い決済」を担当する仕事へと転職する。「いち従業員の立場で経営者がどうみえるのか、現場のチームプレーはどうするべきなのか」を勉強し直すためだ。
起業にはリスクがつきまとうが、「真のリスクとは、そのリスクの存在を知らないこと」。あれが危ない、これも気をつけなければと思うのは、そのリスクをすでに知っていることにほかならない。挫折も味わったが、さまざまな経験を積んで、「将来は再び起業したい」と、夢をあきらめない。(文中敬称略)
プロフィール
小猿 雄一
小猿 雄一(こざる ゆういち)
1983年、大阪府生まれ。07年、大阪市立大学経済学部卒業。在学中の05年に起業。飲食店や企業間(B2B)マッチングサービスなどを手がける会社を経営。11年、ネットプロテクションズ入社。新規事業の企業向け「FREX B2B後払い決済」サービス事業を担当。