出産は二度目となる。一度経験しているとはいえ、出産には何かと不安がつきまとうもの。だが、森綾乃の不安はきっと軽い。産休明けの森を歓迎する職場が待っているからだ。
一人目を出産し、産休が明けて職場に復帰した森は、社内のワークライフバランス推進役を任された。出産を経験し、育児に追われる森には問題意識があったため、願ってもないチャンスだった。目指したのは、ワークライフバランスを改善し、仕事と子育てが両立できる環境の整備。出産後の不安を払拭できれば、育児のために職場を離れる必要がなくなる。会社にとっても、優秀な人材が育児で離職するという事態を回避できる。
もちろん、出産や育児に限ったことではない。働きやすい職場は、社員の生産性を上げることにもつながる。「SIerは“人”がすべて。価値あるサービスをつくりだすには、社員のワークライフバランスに配慮して、働きやすい環境を整備する必要がある」。働きやすくなって生産性が上がり、企業も成長する。そして、家庭も円満。
森の取り組みが評価され、2013年に東京都の「東京ワークライフバランス認定」制度の「育児・介護休業制度充実部門」に選定された。15年にも同制度の「休暇取得促進部門」に選定されるほど、社内全体にワークライフバランスの取り組みが浸透した。
社内で成果を上げた森は、二人目の出産を控え、さらなる野望を抱いている。「この取り組みを社内だけに終わらせるのではなく、情報サービス業界全体に広げて、活性化に貢献したい」。“人”がすべてなのは、どのSIerも同じ。産休明けの森を情報サービス業界が待っている。(文中敬称略)
プロフィール
森 綾乃
森 綾乃(もり あやの)
1987年、新潟県生まれ、東京育ち。07年、文京学院短期大学卒業。IT関連会社などを経て09年、プレスク入社。医事会計システム(レセコン)の操作指導や導入支援に従事。13年から雇用環境整備事業を担当。