2013年に一念発起して起業した宮田昇始は、その2年後、すでに二つのウェブサービスを立ち上げ、失敗していた。自己資本と受託開発で凌ぐのも限界がある。そんなとき、家では大きなお腹を抱えて、産休手続きの書類の準備に追われる妻の姿があった。「なんか、すごくめんどくさそう……」。このシーンが、その後急成長を遂げることになる社会保険・雇用保険手続き自動化クラウドアプリケーション「SmartHR」へと続くスタートラインになった。“三度目の正直”である。ビジネスの種は、どこに転がっているかわからない。

インターネットの可能性に魅せられ、大学卒業後にウェブディレクターとしてキャリアを歩み始めた。知識もスキルもないなかで、新卒1年目は毎日早朝まで働き、その数時間後にはまた出勤。時間と体力でそのハンデをカバーした。情熱だけが原動力だったが、この努力はやがて周囲の心を動かし、実力を認められるようになっていく。この経験を糧に、革新的なウェブサービスを世に出すことを求め、何度か職場を変えることになる。
しかし、そんなさなか危機が訪れる。耳のなかに水疱ができる難病「ハント症候群」に倒れた。医師には後遺症が残る確率も高いと宣告されたが、2か月間休職し、落ち着いて療養したことが功を奏し、無事に完治。「どうせなら、好きなことをやってやろう」と、起業を志す直接のきっかけになった。
場面は冒頭に戻り、産休手続き書類を書く妻の姿を見ながら、自身も療養期間中に疾病保険を利用したことを思い出す。「制度そのものにはずいぶん助けられたが、手続きは面倒だった」。スタートアップの経営者としても、社会保険手続きの煩雑さには悩まされていた。こうして閃きが現実の課題にリンクし、新しいビジネスは走り始めた。(文中敬称略)
プロフィール
宮田 昇始
宮田 昇始(みやた しょうじ)
1984年熊本県生まれ。中学1年から親元を離れ、学生寮で6年間生活(私立 真和中学・高校)。専修大学を卒業後、50人規模のベンチャー企業でウェブディレクターとして勤務。その後、医療系ベンチャーにウェブプロデューサーとして転職。在籍中にハント症候群に。完治して復職するも、起業を決意。12年10月に退職し、13年1月、KUFUを創業。