今年1月、IIJグローバルソリューションズ(中国)は、DC事業者の上海数訊信息技術(SDS)と提携し、ホステッド型プライベートクラウド「仮想化プラットフォーム VWシリーズ」を中国市場に投入した。このプロジェクトの立役者は、技術統括部の李天一。IIJ側は技術支援や運用人材を提供し、SDSはDCや顧客基盤を提供する両社Win-Winのビジネスモデルを実現させた。
技術者としてクラウドサービス運営を統括すると同時に、パートナー開拓に従事する李は、微信(WeChat)などを活用し、IT関係者が集まる会合で精力的に人脈を開拓している。SDSとは、足で稼いだ人脈を頼りに接触。従来型DCサービスの先行き不透明感から、新ビジネスを模索していた同社と、VWシリーズ提供にあたり、新たな基盤を探していたIIJとの思惑が合致した。
ただし、経営トップ層と固く手を結んでも、SDSのスタッフがみな提携を好意的に受けとめてくれるわけではない。そこで、李は40人ほどいるSDSの課長職以上のスタッフすべてを個別に訪問。同社が参加する外部のイベントや社内イベントにも必ず参加し、地道な信頼獲得に没頭した。「日中の文化を理解し、懸け橋になれるのは会社で自分だけ。現地ビジネスの開拓は自分が引っ張る」との使命感が李の足を動かす。その努力が実を結び、SDSは「数据中心雲化(DCのクラウド化)」を重要課題に掲げてクラウド事業部を新設。VWシリーズの販売を営業の評価基準に盛り込むなど、提携に本気の姿勢を示している。

過去に、「このまま中国法人でキャリアを積んでいいのか」と、日本への帰任をもちかけられたことがある。しかし、「小さな中国法人だからこそ、大きく成長させれば、それだけ自分も成長できる」と断った。目標は会社を中国No.1のプライベートクラウドベンダーにすること。決意は固い。(文中敬称略)
プロフィール
李 天一(Li Tianyi)
中国・山東省出身。名古屋大学大学院を卒業後、2008年にインターネットイニシアティブ(IIJ)に入社。ネットワークインテグレーション部門でプロジェクトマネジメントに携わる。11年、IIJグローバルソリューションズに出向し、中国現地法人の立ち上げに参画。その後、IIJグローバルソリューションズ(中国)の設立を経て、12年6月に同社に出向。現在に至る。