入社当初の担当は、顧客に納入したストレージ製品の保守・サポート。お呼びがかかるのはトラブル発生時で、問題が解決するまで現場に張りつく業務。帰宅時間も遅かったが、新卒エンジニアの河口信治はその仕事に意外なおもしろさを感じていた。「保守というと、サーバールームでずっと機械に向き合う仕事だと思っていたが、実際に就いてみたらそのイメージとは正反対。向き合う先はお客様だった」

インフラに強いベンダーのエンジニアではあるが、「自分は理工系でも電気・電子科出身で、コンピュータとは縁遠かった」といい、もともとITに自信があったわけではない。この先も技術で同期のエンジニアにかなうことはないと入社直後に悟ったが、人と話すのは昔から好きだった。障害対応時には怒られることもあったが、対話を通じて顧客の悩みやニーズを発掘するプロセスにやりがいを感じ、いつの間にかセールスエンジニアのエースになっていた。
一番つらかったのは入社直後よりも、保守からプリセールス部門へ正式に異動となったときのこと。それまでは、泊まり込みをしてでも仕事さえ片付ければよかったが、異動先は働き方改革の重点部署に位置づけられており、上司からは「決められた時間のなかでパフォーマンスを出せなければ評価しない」と厳しいお達しが出されていた。ちょうど子どもが生まれた直後でもあり、会社では就業意識改革、夜は家で子どもの夜泣きに悩まされた。河口は「無尽蔵に時間を使って働いていたほうがよっぽど楽だった」と振り返るが、結果的には仕事で成果を出しながら家庭の時間も大事にできるようになり、大きな成長につながった。
学生時代の留学経験を生かし、米国法人での勤務も夢に描く。(文中敬称略)
プロフィール
河口 信治
河口 信治(かわぐち しんじ) 1986年奈良県生まれ。2010年に日商エレクトロニクス入社、ストレージ製品の保守・サポート業務を担当する。14年からはプリセールス部門に移り、同社が扱うさまざまな製品に関して、提案や設計・構築など導入前の工程を担当するエンジニアとして活動している。