「そんな世界をつくりたい」。宮本章弘が常に考えていることだ。スタートアップ企業のDeaps Technologiesが提供するAIでつながるお出かけアプリサービス「Deaps」も、宮本の「そんな世界」からサービス化を実現させた。
脳神経の研究に明け暮れていた学生時代、隣の研究室でやっていた実験が何気なく目にとまった。AIだ。「なんて、おもしろそうなんだ」。大学院を卒業した後は、迷わずIT業界に進んだ。蓄積した知識を生かさずにもったいないともいえるが、「そんなに大したことは学んでいない」とあっさり。システムエンジニアとして就職して、さまざまな技術を短期間で習得した。天才肌を発揮して、ほとんどの技術を吸収した。「もともと独立するためにエンジニアになった」という。ところが、会社は優秀な人材を逃さない。宮本に海外勤務を伝えた。
ニューヨーク赴任から7年ほどが経過した頃に帰国。新規事業推進部を希望して配属となった。すぐに企画書を作成し、社長にベンチャー事業化を懇願した。富士通システムズ・イースト(当時)にとっては、ベンチャー第1号となるDeaps Technologiesを2016年7月に設立。設立から約5か月後の12月、Deapsの提供を開始した。
Deapsは、ユーザーの想いや行動データをもとに同じ趣味嗜好やライフスタイル、価値観をもつ人たちの体験や情報をつなぎ、AIによってユーザーの潜在的な興味を見つけ出して、さらに深い体験が味わえるというもの。「個人の体験価値の最大化によって、新しい発見や感動を生みだす」。宮本がつくりたかった「そんな世界」だ。現段階は「お出かけ」にフォーカスしているが、今後は新しい世界を生み出す機能を順次追加していく。(文中敬称略)
プロフィール
宮本章弘
(みやもと あきひろ)
1979年、三重県生まれ。豊橋技術科学大学大学院を修了後、富士通のグループ会社に入社。システムエンジニアとして大規模プロジェクトを経験。08年に米国・ニューヨークに赴任し、モバイルや人工知能(AI)を活用したプロジェクトの企画から製造までのマネジメントを担当。15年4月に帰国後、自身の希望で新規事業推進部に配属。「Deaps」の企画書を作成し、富士通システムズ・イースト(当時)の社長にベンチャー事業化を懇願。16年7月、Deaps Technologiesを設立し、代表取締役CEOに就任。