国内の大学を卒業後、米ボストン大学大学院へ進学するにあたって、山田理英子が決めたのは、「手ぶらでは帰らない」こと。「外国に行ってみたい」との思いが留学の原点だったが、就職活動もせずに行くからには、何らかの成果を持ち帰らないと、それまでお世話になった人たちに顔向けできないからだ。そこで、「雇ってもらえる価値をつくろう」と、現地で日本人スタッフを募集していたマーケットワンに入社した。
そして後年、山田が日本に持ち帰ったのは、同社の日本法人とサービスである。十分に胸を張って誇れる“手土産”といっていいだろう。
マーケットワンは、独自のマーケティングコンサルティングサービスをグローバルで展開している。しかし、日本展開を目指した10年前、経営層に対して直接アプローチを試みる同社のテレマーケティング手法が、国内で理解を得られるのは簡単ではなかったという。「海外ではあたりまえの手法だし、本社から日本へサービスを提供するなかで、外資系の顧客から要望が確かにあって商機はみえていた。地道に、でも着実に実績を積み重ねてきたことで、考え方を広めることができた」と振り返る。
そんな日本向けのビジネスを、実質的にほぼ一人で確立した。「苦労は大なり小なり常にあったが、失敗の連続でも、それを次に生かせばいい。リスクをとってもチャレンジするアメリカンな精神は、米国のビジネスの世界で培った」と力を込める。一方で、「プロセスをつくってPDCAを回していく日本人的な要素ももっている」。最近、プライベートで着付けを習い始めたのも、「アメリカンの反動かもしれないけど、日本人であることが大好きだから」と笑顔で話す。“和魂洋才”が、山田の行動のモットーだ。(敬称略)
プロフィール
山田理英子
(やまだ りえこ)
千葉県松戸市出身。ボストン大学大学院を修了後、2003年にMarketOne Internationalに入社。06年、マーケットワン・ジャパンを設立し、マネージングディレクターを務める。12年から、アジア・パシフィック地域統括担当も兼務する。