幼少期をシンガポールで過ごし、20代で起業した。まわりの人に止められても、やりたいことに向かって猪突猛進してきた。谷口優の原動力は、「正しいと思ったことは、リスクがあっても必ず実行する」という強い気持ちだ。
高校を卒業して、いい大学に入り、いい会社に入る──。日本であたりまえになっている考え方が、まったく理解できなかった。帰国後に入学した高校も、大検を取得して入った大学も、ともに中退した。
「中卒じゃ生きていけないよ」。そういわれることもあったが、「勉強は自分でやればいい」と一蹴。社会に入り、荒波にもまれながら経験を積んできた。
仕事をするなかで、ホテルの宿泊予約が一気にオンライン化する流れをみた。クレジットカードでの決済が可能になったり、キャンセル料がとれたりする予約管理システムは、「飲食店にも波及していくはず」とひらめいた。
しかし、会社に所属していると、役員の承認がなければ、やりたいことを事業にできない。悶々とする日々を送るうちに、「自分でやるしかない」との答えにたどり着き、VESPERを設立した。
社名は、「宵の明星」を意味する英単語からとった。「人口減に転じたり、景気の悪い話があったりする社会に、一筋の光を投げ込みたい」という願いからだ。
ゲームも、スポーツも、料理も、やると決めたら、とことんやり込む性格。「趣味」と位置づける仕事では、営業活動などで東奔西走する。「いつ死んでもいい」という覚悟で、毎日、完全燃焼の生活だ。
会社は当初から順風満帆ではなかった。事業が行き詰まり、仲間が去っていったこともある。だが、今は違う。同じ思いをもつ大勢の社員が近くにいる。にぎやかになった会社の先頭に立って、自分が信じた道を突っ走っていく。(敬称略)
プロフィール
谷口 優
(たにぐち ゆう)
1984年6月生まれ。商社に勤めていた父の転勤に伴い、10代の頃の通算約10年をシンガポールで暮らす。電子決済代行会社などで勤務し、2011年3月にVESPERを設立した。