高校生のときは、「週七でハンドボールに打ち込んだ」と話す小林美貴。高三のとき出身地香川県の県大会で三位に食い込んだのが自慢だ。
個々のメンバーの実力値ではよくて4~5位。でも、「チーム7人の密な連携で総合力を発揮できた」と振り返る。以来、ものごとは「何をやるかも重要だが、誰とやるかはもっと重要」を信条にしている。ぶつかることもあるけれど、それ以上に「メンバーに救われたからなんとかやってこれた」。
今は、地域医療・介護のコンサルタントとして全国を飛び回る。少子高齢化が進み、地域は医師や看護師、介護福祉の担当者が密に連携して支え合う時代がきている。小林は地域連携の専門家として「地域での推進役、世話役になってくれる人を応援する活動」を展開。医師でも自治体でも介護事業者でも、あるいは民間企業でも、メンバーをうまくまとめる能力がある人を後押しする。
小林がこの仕事に就いたのは、東日本大震災直後の2011年。大きな被害に遭った石巻市の地域医療・介護の復興活動に参加。震災で仕事に復帰できる人が限られるなか、参加可能な人が自発的に連携して、地域を支える姿をみる。医療や介護、民間企業の垣根をみんなが乗り越えていく。「あぁ、これ、ハンドボールに似ている」と腹落ちしたそうだ。
ハンドボールは攻めも守りも全員参加が基本。チーム内の連携によって個人の実力以上の力を引き出せる。地域が抱える課題を解決する糸口を垣間みた思いだった。「地域のメンバーが連携して課題に向き合う」ことが、“華麗なるシュート”の決め手になることを信じている。(敬称略)
プロフィール
小林美貴
(こばやし みき)
1986年、香川県生まれ。東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科を経て、2011年3月、筑波大学大学院ヘルスサービスリサーチ研究室を卒業。同年4月、富士通総研に入社。