
「IoTは金融と違い、リプレースの必要がない。だからこそ、ブルーオーシャンがたくさん残っている」
左舘経明は、金融業界のしがらみに難儀していた。旧態依然としたシステム、グローバル展開を阻む法規制。やきもきすることが多かった。しかし、IoTにはそんな壁は存在しない。その新鮮さは非常に魅力的だった。
父は日本人で母はルクセンブルク人。出身地はフランス。学生時代は父が転勤族だったことから、国を転々とした。社会人になってからは音楽、著作権管理、金融と数多くの業界をわたり歩き、スキルを磨き人脈を築きあげてきた。なかでも、金融業界での経験は今の事業に直結する。数多くの経営者とのやり取りを重ねるうち、フランスの重工業では意外にもITインフラが進んでいることに気づいたのだ。「これはビジネスになる」。そう確信した。そして2015年、工業IoTを手がけるインターポレーションを、ここ日本で立ち上げた。
しかし、日本でのビジネスはあくまで通過点。「日本は妙に効率的。今あるそれなりの生産性をわれわれのソリューションでさらに向上できるとしても、現状に満足していて変えようとしない」。意思決定が遅く、すでにある程度インフラが整備されている日本で新たなビジネスを展開するのは難しい。ただ、充実したインフラがあるからこそソリューションを試す余地はたくさんある。
「欧州で確立された強みのある技術を日本で試し、われわれの主戦場である東南アジアに持ち込む。日本はいわゆるテストベッドだ」
左舘の言葉は国にとらわれず、ひたすらに合理的だ。それは、国を越えて生きてきたからなのかもしれない。左舘は今、世界とIoTに広がる青い海をまっすぐにみつめている。(敬称略)
プロフィール
左舘経明
(さたて みちあき)
1977年、フランス・パリ生まれ。大学卒業後、スタジオエンジニアに。その後、著作権管理、音楽レーベルの運営、繊維事業などで創業にかかわり、海外戦略などで活躍。2013年設立のLYUDIA INC.がIngenicoグループの日本法人となる。15年にIoTソリューションを提供するインターポレーションを創業。