文字を入力すると、画面の動きが変わる。「これは面白い」。子どもの頃、ゲーム機で遊んでいたときの記憶を、束建偉は今でも覚えている。大人になった現在はIT業界に身を置く。前身の時代を含めてNTTデータイントラマート上海での勤続年数は13年目を迎えた。これまでの年月を振り返り、日本は「自分を成長させてくれた」と語る。
コンピューターに対する関心は、年齢を重ねても薄れることはなかった。高校でプログラミングを習い、大学は関連の学科に進学した。卒業後は自然とIT企業への就職を考えたが、日系企業を選んだのは、大学時代の恩師の紹介があったから。それまで「日本とかかわるとは思ってもいなかった」と明かす。
入社後は、日本向けの開発を担当。日本語の勉強は入社後に開始し、朝から晩まで図書館にこもって習得した。日本人と一緒に働き、「仕事に対する真面目な姿勢やプロジェクト管理の方法に感銘を受けた」と語る。
現在は社内で一番の古株。開発業務のほか、趣味で培った経験を生かし、ホームページに掲載する図の作成も手掛ける。「弊社の製品について理解してもらえると楽しいし、顧客のニーズをどうやって満たすかを考えることも面白い。仕事を辞めたいと思ったことは一度もない」と笑顔を見せる。
実直な姿勢で業務に当たる一方、プライベートでは子煩悩な一面も。妻と1歳の長男は、地元の江蘇省丹陽市で離れて暮らすため、毎週金曜日は約1時間半をかけて上海市から帰宅し、週明けは自宅から出勤する生活だが、「子どもの成長を実感できることが幸せ。これがあるから耐えられる」と話す。
将来の夢は「自分の会社を設立して、これまでの経験を生かして世の中の役に立つような製品をつくること」。コンピューターに対する変わらぬ思いを胸に、実現に向けてこれからもまい進するつもりだ。(敬称略)
プロフィール
束建偉
(Shu Jianwei)
1984年6月、江蘇省丹陽市生まれ。2007年9月に江蘇大学コンピューター技術学科を卒業後、同年10月にNTTデータイントラマート上海の前身の北京NTTデータ上海支社に入社。エンジニアとして開発を担当し、チームリーダーやプロジェクトマネージャーを歴任した。