住商情報システムの事例
キャリアアップを重視
公募制、FA制度を実践
住商情報システムは、ITスキル標準をベースにキャリアアップできる制度を採り入れている。自社の技術力やマネジメント、ヒューマンスキルの強化や新たな成長の柱として海外で活躍する人材の育成など、多彩な教育を行う。06年には事業部が欲しい人材の要件を提示し、募集する公募制と、09年から希望の部署に自分を売りこむ社内FA(フリーエージェント)制度をスタートさせた。
公募制、FA制度ともに、部署の枠にとらわれず、「個人が自主的に応募できるもので、所属部署の上長に拒否権が発生しない」(中谷光一郎・執行役員総務人事グループ長人事部長)のが特徴である。
公募制などを利用すれば、例えば、技術者が広報など管理部門に異動することも可能で、年間平均して20~30人が利用している。社内FA制度は今年1月に新設し、2月中旬時点で数人が手を挙げている状況だ。
現業務経験3年以上の人材に適用される制度で、FA制度の利用者が自分の能力・スキルを公開したい部署にのみ、情報を流すことが可能。情報を公開した部署で、引き合いがあればマッチングを行い、異動の可否が決定する仕組みだ。
同社では、現在人材情報システムを強化している。社員の能力開発やマネージャの部下の育成支援を目的に、個人の業務や研修受講・資格取得・ITSSに準拠したスキル診断の情報の履歴を登録した、「人財開発」の情報ポータルとして活用する。いずれはキャリアデザインプランや目標設定との連携、人事考課の参考指標などへの活用も考えている。
NTTコムウェアの事例
独自システムを開発
人材育成を効率化
NTTコムウェアは、目標設定、スキルアップ、成果確認の3つを回すことでキャリアアップを図る「HCMサイクル」に基づいたプログラムを実践している。そのインフラとなるシステムとして「My育トラネット」を社員に提供している。My育トラネットは、共通コンテンツのほか、個人ページでは設定した目標に対して必要なスキルやそれを習得するための研修機会を得られる仕組み。ITスキル標準をもとに、同社のカスタマイズを加えた人材像の指標「ComCP」では、セルフアセスメントを実行することが可能で、現在の自分のスキルと、目標とのギャップを視覚的に見られるのも特徴の一つだ。
キャリアデザインに迷った人向けにセミナーを開催したり、キャリアアップ支援室を開設。随時相談に応じている。「話しているうちに自分で整理をつけている人も多い」(総務人事部HCMセンタの渡邉順子担当課長)という。
My育トラネットでは共通ページでキャリアナビゲーションという、上位技術者のインタビュー記事を定期的に掲載。仕事内容やキャリアに関わる情報を手に入れやすいよう気を配る。
また、モチベーションを高めるため、技術認定のレベルに応じてストラップの色が最初は若草色から始まって、黄、赤といったように変わっていく。認定試験に合格した技術者の氏名も、「社内で公表する」(同部HCMセンタの井口隆宏主査)という。他の社員へのスキルに対する意識づけの意図があるためだ。
ワークス牧野CEOの人材採用戦略
充実のインターン制度で選りすぐり
年間3万人が応募する人気制度を運用
「ノンカスタマイズERPを大企業に直接売る」――。ワークスアプリケーションズ(ワークス、牧野正幸CEO)は、そんな前代未聞のコンセプトで市場を切り開き、設立12年で年商は200億円超え、経常利益率は17.0%に達する有力パッケージメーカーへと成長した。
ワークスが注目を集めるのは、その成長性や斬新な事業コンセプトだけではない。人材採用手法が独特で、学生から圧倒的な人気を集めている。独特のインターンシップ制度を運用し、それが就職を目指す大学生の関心をひき、年間約3万人もの学生が同社のインターンシップに応募する。内定取り消しや新卒採用枠縮小が目につくが、ワークスは2010年新卒者の採用人員を50%拡充。他社が新卒採用に消極的ななか、逆に積極的に優秀な人材を確保しようとしている。
ワークスのインターンシップ「問題解決能力発掘インターンシップ」は、単なる就業体験ではなく、課題を与えて自分なりの答えを学生が導き出す仕組みを取り入れている。社員が手取り足取り教えることはなく、あくまで学生自らに考えさせる。それをワークスの社員が見極めるのだ。処遇も魅力で、インターンシップ期間中には日給1万円を支給する。
このなかから優秀な人材を選りすぐり、正社員として迎え入れる。正社員の待遇はかなり手厚く、社員の応募要綱には、給与は年俸制で500-600万円と明記。日本のITベンダーのなかでは突出しているだろう。牧野CEOは人材採用業務の重要性についてこう説明する。「優秀な人材をいかに新卒段階で獲得できるかが、その後の組織づくりや人事を大きく左右する。ワークスはそのための労力とコストを惜しんでいない。金額に換算すれば、採用コストは1人1000万円はかかっているだろう」。また、牧野CEOは「優秀さ」の定義についてこう持論を展開する。「オンリーワンの力を持ち、かつその領域でトップレベルの力を備える人材」というのだ。
社員のスキルを引き上げるにも、当人が能力を持っていなければ話にならない。だから、新卒採用に手間と時間、カネをかける。牧野CEOはそう結論づけているように感じる。