Googleの弱点とは
ユーザーに拒否反応
ギャップ解決がカギ
グーグルが販売パートナーを大企業向けのビジネスを展開できるSIerに絞り込む裏側には、グーグル自身の弱点が透けて見える。その一つが、Google Appsの基本アーキテクチャであるクラウドコンピューティングだ。文字通り“雲をつかむ”ような話であり、大切なデータを雲の中に置くのを躊躇するユーザー企業も見られる。今、販売パートナーに名を連ねるSIerは、このグーグルとユーザー企業のギャップを埋める解決策を持っている企業ばかり。見方を変えれば、ギャップ解決に消極的なSIerは、Google Appsのビジネス参入は難しい。
軽い気持ちはいらない グーグルの某販売パートナーの幹部は、「かつて絶対的な強さを誇ったIBMに、マイクロソフトが攻勢をかけてきた。今はクラウドを手に、グーグルがマイクロソフトの位置につこうとしている」とみる。その幹部は顧客企業に対して、「IT業界の覇者は、メインフレーム→パソコン系のパッケージソフト→ネット系のクラウドへと、ITの主流になるアーキテクチャとともに移り変わる」と説明する。その説明で分かってくれる先もあれば、そうでない先もあり、クラウドへの敷居をいかにスムーズに乗り越えるのかが、SIerに最も求められる技量といえそうだ。
グーグルは、「クラウドが流行っているから、とりあえずGoogleでも担いでおこうか──というような軽い気持ちのパートナーはいらない」(グーグルの大須賀利一・エンタープライズセールスマネージャー)と、態度を明確にしている。クラウドは、これから本格的に拡大するアーキテクチャであり、現状の発展途上の段階でミスを犯して、顧客企業の不興を買いたくないという意識がうかがえる。
富士ソフトと並んで「企業規模に制限がない販売パートナー」の電算システムは、実はここに目をつけた。
販売パートナー向けの支援策が整備されていないからこそ、「顧客企業向けのマニュアルづくりやサービスサポートなど、当社独自のサービスを揃えることができる」(電算システムの渡辺裕介・システム営業部長)と、先行者メリットを見いだす。別のSIer幹部は、「20年前のマイクロソフトと同じで、販売パートナー向けの支援も何もあったもんじゃない。だからこそやりがいがある。整備された販売パートナー支援策に慣れたSIerは、グーグルではなく、マイクロソフトのクラウドを担ぐだろう」と話す。
自由なネット企業文化 インターネットで生まれ育ったグーグルの企業文化は、ネットの自由な文化そのものだといえる。技術情報はネット上の技術者コミュニティに参加し、人脈を形成。重要な技術情報もコミュニティ活動を通じて得られるケースが多い。コミュニティでは、Google Appsに関わる世界中の技術者と意見交換ができ、国内SIerのなかでも、「先日、誰々さんがこんな話をしていた」「どこどこさんが、こんなプログラムを公開した」など、オープンソースソフト(OSS)のコミュニティ張りの会話が交わされる。
Google Appsの開発パートナーであるゼネラル・ビジネス・サービス(GBS)の西川浩平・システムズアーキテクトは、「テキストだけでなく、YouTubeの動画で最新の技術動向を学ぶなど、これまでのパッケージソフトベンダーとは“ノリ”が違う」という印象を受けている。クラウドで競合するマイクロソフトや日本IBMが、販売パートナー向けの支援部隊を用意し、さまざまな販促プログラムや技術資料を提供するのとは大きく異なる点だ。グーグルのサービスの多くは、インタフェースや機能が頻繁に更新される。完成という概念がないかのようである。この点、マイクロソフトはパッケージソフトとして完成版をリリースし、機能の追加やインターフェースの変更は次期バージョンでまとめて行う。ネットの文化とパッケージソフトの考え方の違いが際立つ。
Google Appsの責任者に聞く
パートナーは60社ほどに増加
大企業向けは慎重に
――Google Appsで販売パートナーと組む時期が遅れたのはなぜか。
大須賀 遅れたわけではない。2007年からGoogle Appsの企業向け販売を始めたが、当時はまだ販売のノウハウをもっていなかった。売り方が分からないのに、代理店を募ることなどできない。その後、富士ソフトから声をかけられ、2008年6月に販売パートナーになってもらった。販売代理店を拡充し始めたのはこの頃からだ。
――販売パートナーは何社に増やすのか。
大須賀 顧客企業の規模に関係なく販売できる“制限なしの販売パートナー”は、あまり増やす予定はない。セレクティブに行う。一方で、顧客企業の従業員数が250人を下回る層を対象とする“制限ありの販売パートナー”は増やしていく。現在は数社だが、すでにネットなどを通じて50社余りから申し込みがきている。向こう1年間で、既存パートナーと合わせて60社ほどに増える見込みだ。
――なぜ、販売パートナーを2種類に分けるのか。
大須賀 近年、“クラウド”がまるでバズワード(流行言葉)みたいになっている。クラウドで先を行くグーグルの商品を“とりあえずは担いでおくか”などといった軽いノリの販売パートナーはいらない。大企業のシステムともなれば、本当にクラウドを理解しないと商談の成立は困難。このハードルを越えられる販売パートナーとだけ組みたい。ただ、中堅・中企業向けの販売パートナーについては、ネットから申し込んで当社の簡単な与信審査のみでなれる。
[次のページ]